PPバンドがなくなるの?!サンコーインダストリーの物流現場で見えた、モノ不足の正体
- 2026/5/4
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ガソリン価格が高い。
食品も、資材も、あれもこれも値上がりしている。
ニュースでは戦争の影響、原油価格、物流不安といった言葉が並ぶ。
なんとなく、世の中全体が「物が入りにくくなっているのではないか」という空気に包まれている。
そんな中、サンコーインダストリー株式会社(以下サンコーさん)の物流現場で、ある物不足が突然顕在化しました。
PPバンドです。
PPバンドとは、段ボール箱などにぐるりとかけられている、あのプラスチック製の帯状の資材です。ホームセンターや工場、物流倉庫などで見たことがある人も多いでしょう。荷物をまとめるために使われ、箱の補強にもなり、重い荷物を持ち運ぶときの助けにもなります。

通常の荷姿。PPバンドが3回巻き付けれれる。
普段、受け取る側はあまり気にしません。
けれど、出荷する側、運ぶ側にとっては、かなり重要な存在です。
とくにサンコーさんのように重量のある商品を扱う現場(ねじは重い)では、PPバンドは単なる「ひも」ではありません。商品を安全に届けるための、物流の一部です。
そのPPバンドが、突然入ってこなくなりました。
毎週入ってくるはずの資材が、急に止まった
「まさか、PPバンドが入ってこなくなるとは思っていませんでした」
そう話すのは、サンコーの物流を担当する三岡さんです。

状況を説明してくれる三岡さん。
サンコーさんでは、商品を段ボールケースに入れて出荷する際、箱が破損しないようにPPバンドをかけています。運送会社に引き渡した後も、荷物は仕分けられ、積み替えられ、別の拠点を経由してお客様のもとへ届きます。
箱を補強する。
持ちやすくする。
積み替え時の扱いやすさを保つ。
そして、商品をきれいな状態で届ける。
当たり前のように使ってきた副資材でした。
サンコーさんでは、これまで毎週決まった量のPPバンドを発注していました。毎週入ってくるのが当たり前。なくなるものだとは考えていませんでした。
ところが4月上旬、資材を扱う取引先から突然連絡が入ります。
「来週から納品できなくなりました」
その前日にも確認はしていました。
「大丈夫ですか」と聞くと、「まだいけます」という返事だったといいます。ところが翌朝、状況は一変しました。
「こちらも何度か確認していたので、そのタイミングで連絡をもらえたのかもしれません。もし何も聞かずに、いつも通り納品を待っていたら、もっと遅れて気づいていたかもしれません」
手元の在庫は限られています。
これまで通りに使えば、長くは持ちません。
そこでサンコーでは、箱に十字にかけていたバンドを一文字にするなど、使用量を減らす運用に切り替えました。いわば延命措置です。

PPバンドの使用を少なくした荷姿。
「今は使用量をかなり落としています。でも、それで問題がないわけではありません」
実際、運送会社にも相談したところ、バンドがなくなると困るという反応がありました。
バンドがない荷物は持ちにくい。
箱の強度にも不安が出る。
積み替えや配送の現場でも扱いづらくなる。
「うちだけが出荷できればいい、という話ではありません。運送会社さんにとっても大ごとですし、最終的にお客様のところへきれいな状態で届くかどうかが大事です」
高くても買えない
では、別のルートから調達できないか。
そう考え、サンコーでは複数の取引先やネット販売をあたりました。通常よりかなり高い価格で販売されているものもありました。それでも買えるならと注文したところ、あとからキャンセルになったこともあったといいます。
「今は、高くても買えない状態です。売っていれば買いたいんですけど、そもそも物がないんです」
別のルートで、なんとか少量だけ確保できたこともありました。
しかし、それも日々の出荷量を考えれば、すぐになくなってしまう量です。
PPバンドが本当に尽きた場合に備え、サンコーでは段ボールケースそのものを見直す準備も始めました。
通常使っている段ボールを、より丈夫なタイプへ変更する。
1箱あたりの重量を減らす。
箱数が増えることも想定する。
もちろん、箱数が増えれば運送費は上がります。資材コストも上がります。現場の作業も変わります。
それでも、商品を安全に届けるためには、避けられない判断になるかもしれません。
「まずは調達です。買えるものがないか探し続けます。その一方で、どうしてもなくなったときにどう出荷するかも考えています。お客様に商品をしっかり届けるために、できることを準備している状態です」
影響はPPバンドだけではない
三岡さんが気にしているのは、PPバンドだけではありません。
ナイロン袋、エアークッション、OPPテープ、ラベル類。
物流現場で使う副資材は数多くあります。
その一つひとつについて、納期や在庫、代替品の確認を進めています。
「10個ぐらいならまだしも、数が多いんです。ひとつずつ確認して、入らなくなった場合にどうするかを考えないといけません」
たとえば、エアー入りの緩衝材が遅れ始めているため、紙の緩衝材に切り替えることも想定しています。
代替できるものはまだいい。
問題は、代わりが簡単に見つからない資材です。
「入社してからずっと、PPバンドをかけて出荷するのが普通でした。当たり前だと思っていたんです。だから、なくなると不安です。ちゃんときれいな状態で届くのか、そこが一番気になります」
物流は、トラックや倉庫だけで動いているのではありません。名前も知られない小さな副資材が、今日も荷物を支えています。
そのひとつが欠けるだけで、現場は大きく揺れるのです。
これはモノ不足ではなく取り付け騒ぎ
その後の調査で、少し違った見方も見えてきました。
今回のPPバンド不足は、単純に「原料が足りないから起きた」とは考えにくいのです。
時期を追うと、実際に原料不足の影響が出る前に、市場からPPバンドが消え始めています。
では何が起こったのか。
一時期、PPバンドに一気に注文が入った。
そもそもPPバンドは、市場規模がそこまで大きい商品ではなく、流通在庫も多くない。
さらに流通経路が複雑で、販売会社の側から見ると「なぜか急に入ってこない」という認識になりやすい。
そこに、不安が重なりました。
「今のうちに多めに発注しておこう」
「次に入ってこなかったら困る」
「少しでも在庫を持っておきたい」
そうした自己防衛の発注が一気に重なり、流通在庫が枯渇した。
今回の現象は、そう推察できます。
つまり、需要が本質的に爆発したわけではない。原料が完全に止まったわけでもない。
不安が先に走り、在庫を奪い合う形になった。要は取り付け騒ぎです。

30年前に新入社員だった編集長前田もPPバンドを巻いていました。
これは、コロナ禍のマスク不足や、オイルショック時のトイレットペーパー騒動とよく似ています。
必要以上に買いに走る。
それを見た人が、さらに不安になる。
本当に必要な現場に届かなくなる。
過去に何度も経験してきた、愚かな連鎖です。
もちろん、現場が在庫を確保しようとする気持ちはわかります。
商品を止めるわけにはいかない。
お客様に迷惑をかけられない。
だから備える。
しかし、全員が同じ方向に走れば、結果として社会全体の首を絞めます。
PPバンドは、目立たない資材です。けれど今回、その目立たない資材が、物流の足元にある不安を見える形にしました。
物価高。
燃料高。
戦争の影響。
流通の不安。
それらが重なったとき、人は冷静さを失いやすい。
でも、ここで必要なのは、買い占めではありません。
正確な情報と、冷静な発注です。
みんな、冷静に。
これは過去にわれわれが何度も経験してきたことです。
同じ失敗を、PPバンドで繰り返してはいけません。また、今後やってくる「眼の前からモノがなくなっていく」ことに動揺してはなりません。
30年前の4月、大阪の専門商社へ新卒社員として入社しモノの在庫や価格を見てきた編集長前田は、つとに思います。
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