日々東大阪のお店を食べ歩く週刊ひがしおおさか。よく「ラーメン好きですね」とか「カレーばっか食べてるから太るんですよ」とか「パンとかケーキとかバターの多いもの食べてるから悪玉コレステロール値が高いんですよ」などといろいろありがたいアドバイスを受けております。
が。
編集長前田に限って言えば、1番好きなのはそのどれでもない。もちろん嫌いではないし、大好きですよ。おいしくいただいています。umamiの塩は最強だと思うし、リエルグもファミーユも芸術です。間違いない。
でも前田が何も考えずに、ただ好きなものを食えと言われれば、「そいつはうどんだ」って答えます。
おいしいうどんの条件は非常にシンプル。麺と出汁。ラーメンのように複雑に複数の要素が絡み合うのではなく、スイーツのように映えるわけでもない。そのバランスと質実剛健さで、東大阪で右に出る者がいないのが水走の「麺処美和」。工業団地の中にあるこの存在感。にもかかわらず、中央大通りから1本入るので知る人ぞ知る店舗。
しかし地域の支持は絶大で、連日食事時には満員御礼です。
人気の要素は広い店内と、麺と出汁。厨房機器の進化やSNSの発達などで、スモールに営業して粗利を稼ぐことができる現代の飲食業界においても、まるでインフラのような安心感を提供しています。
もちろん週刊ひがしおおさかも、忙しいお昼時に充実した昼食を楽しみに来ます。そこにある、便利でおいしくて安心できる。それが古来うどん屋さんが持っていた役割だと思い出させてくれます。
前田的主役、うどんもハイスコア。最近流行りのガシガシ系讃岐とは違う、かと言ってやわやわの大阪うどんとも違う。みんなが好きなうどん屋の麺。
「誰もが好き」を真剣にやり遂げる。そのために揃えたメニューは104種類にのぼり、毎朝仕込んでお客さんを待つ。強い意思を感じずにはいられません。
人気のメニューは?の問いに「鍋焼きうどんや天丼が人気ですね」と答えるのは宮崎好美さん。2代目である和仁さんの妻にして、スタッフの皆さんと切り盛りされています。
全てのメニューが通年あり、うどん屋なのにうどんは人気メニューと言わない。なぜならほぼ全員がうどんをセットで頼むから。うどんは特別ではない。
かつ丼は、しっかり味のついたとんかつをたまごで閉じたもの。美和の武器である「出汁」が存分に効いていて、たまごの火加減も絶妙です。
卵といえば、すぐに「とろとろ」なんて表現する広告屋に
「はあ?美和の丼食ってから言えや。」
と、心の中でつぶやく人も多いはず。
天ざるの揚げ具合も絶妙。高級と大衆のちょうど間にある、ちょっと贅沢したいときに食べる。
今日は天ざる食べるんだと意気込んで選ぶのではなく、メニューをみてから
「今日はいいよね、自分へのご褒美!」
と、突発的に決めるそれ。活力の素。
そうこれこそ、生活の基盤。めっちゃおいしいのに、いつでもそこにある。
こんなお店が職場の近くや地元にあって、たとえ自分がいなくなろうとそこにある。
おいしい美和の麺と出汁と、全部を堪能したあと聞きました。
「この先の目標、こんなお店にしたいとか、そんなのありますか?」
帰ってきた答えは
「こうしたいとかは特にないですよ。強いて言えば、ずっとここでお客さんにおいしいって言ってもらいたいですかね」
と。
昭和の終わり頃、この場所にできた美和は30年以上「地元の人においしい食事を提供したい」と、ぶれずにきました。そしてたぶん、これから令和の時代もその先も、ずっと同じコンセプトで貫くはず。
うどん屋の、うどん屋たる所以を教えてくれる。
エンタメではなく地域に活力を与える。その役割を背負うなくてはならない存在。
うどんのある国に生まれてよかった。普通の食事が、特別でない幸せがここにあってよかった。
また近いうちに。次は冷たいものがいいかな。とにかく、小さな幸せだ。
■手打麺処 美和
住所:東大阪市水走3-6-30
営業時間:11時00分~20時30分
定休日:日曜日
TEL:072-964-5122
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