1月のしょっぱなの極寒の中、週刊ひがしおおさかはラグビーばっかり。せめてラーメン情報流せ!と多数苦情が来ておりますが、今日もラグビーの話題。だって年末年始に取材できるところはラグビーくらいなんだもん。
今回はちょっとマニアックな話。先日、京都産業大学が大学選手権の準決勝で敗退したと記事にしました。
NHKでも中継される、正月の風物詩。いやもう箱根駅伝と並んで伝統っすよ。
でもちょっと思う時ないかな。公園でラグビーしてる子どもたちと、あのテレビの向こうの選手たち。つながってるんだろうけど、なんとなく、ピンとこない。だって、彼らの生活の中心はラグビーだから。お金をもらってはないだろうけど、プロみたいな生活してる。
そんな世界とは少し違う、全国大会に行ってきました。第72回全国地区対抗大学ラグビーフットボール大会。72回もやってるのに、実はラグビーファンの間でもあまり知られていない大会です。
参加するのは北は北海道大学から南は鹿児島大学まで。全国各地区より「大学選手権にはつながらなかったけどがんばったチーム」が出場してきます。出場する基準はいろいろ複雑なんでおいといて、今年優勝したのは、近畿代表の追手門学院大学。関西大学リーグでは3年連続でBリーグ3位です。
開催されるのは、名古屋市のパロマ瑞穂ラグビー場。1月2日から4日さらに6日と、1日おきに試合が組まれ、消耗損のような大会です。
追手門は今年初出場ながら、3戦ともに圧勝。決勝では東北リーグ2位の東北学院大学を55−19で圧倒しました。
特にフィジカルは段違い。タックルされても倒れずオフロードをつなぎ、速いテンポで攻め続けます。
もう一つの武器はスクラムです。試合終了間際、この日9つめのトライはスクラムトライでした。
そりゃそうです。追手門大学が所属する関西大学Bリーグは混戦の関西。いつでもAに上がれる大阪体育大学を筆頭に、今季好調だった龍谷大学、留学生の強い突破が強みの花園大学など、常にアスリートとしての能力を試されます。
「上手い子と言うよりも、どんくさくても真面目な子が多い気がする」と答えるのは、監督の小寺亮太さん。チームに関わって6年目、監督として3年目のシーズンに全国大会で優勝という「結果」を残したことになります。
「3年続けて3位で、成長が頭打ちになっている状況で、このような伝統のある大会で結果を出せたのはいい経験になる」という小寺さんと、編集長前田が初めて会ったのは2017年。Bリーグに昇格したばかりの追手門が、スクラムを武器に強豪を倒し旋風を巻き起こし、練習を見学に行かせてもらったときでした。
当時はBKのコーチングは小寺さん、FW特にスクラムを指導するのはこちらも元ライナーズの阿部仁さん。
当時の選手たちに話を聞くと
「元トップリーガーってこんなにすごいんだって、一つひとつが腑に落ちるし強いチームにも勝てるから楽しい」
となんとも楽しそう。2人とも選手だけでなくコーチとしての経験も豊富なので、そりゃねって感じです。
強いフィジカルを支えるのは、選手の自主練習。新型コロナ前に学校内のトレーニングセンター(愛称:追Fit)でトレーニングする姿を取材しましたが、ポジションに関わらず楽しそうに鍛えまくる姿が印象的でした。
Cリーグから強烈なライジングを果たし、漫画ならこのままAリーグに昇格さらに全国大会へ!というところですが、現実はそう甘くありません。
ここ10年ほど、Bリーグの上位2チームは固定化されています。Aリーグでも長く強豪として戦った過去のある龍谷大学と、Aリーグから降格してきた大阪体育大学、摂南大学、関西大学のいずれか。この上に行くにはさらに成長曲線の角度を上げる必要があります。今までの曲線の上にはない、なにか角度を上げる要素が必要でしょう。
関西Bリーグの3位決定戦は週刊ひがしおおさかでもYoutube配信しました↓
決勝戦の後、記者陣に来季の目標を聞かれた小寺さん。こういうとき、普通の指導者と呼ばれる人はだいたい「Aリーグ昇格」というものです。間を飛ばしちゃうのがマスコミへのリップサービスというもの。ところが
「これまでは入替戦出場を目標と言っていたのですが、上位2チームの壁が厚いのはやはりある。リーグ戦で勝ったりすることもあるのですが、最終成績は3位になってしまう。来季はもうちょっと具体的に『Bリーグで1番のフィジカルを身につける』といったものにしようと思っています。そうすれば…」
と、現実と目標の間を丁寧に説明してくれます。
優勝後の記念撮影のあとの胴上げでは、喜びを爆発させる選手たちが、一番最初に40年以上チームを支えてきた千葉英史副部長を。その後小寺監督、そして沖佑樹キャプテンと次々に。これまでの追手門学院大学ラグビー部の歴史でしょうか。
毎年1月2日・4日・6日に開催される、あまり知られていない全国大会「全国地区対抗大学ラグビー大会」。強くなりすぎると出場できなくなる不思議な大会。
追手門学院大学ラグビー部は、来年この場所にいるのでしょうか。できるなら、次の目標をクリアしてこの場には立っていないでほしい。
今年のこの笑顔が、入れ替え戦の舞台で見られたら最高だから。その目標のために何を埋めなければいけないのか。今まさに物語を紡いでいる姿を見続け記録しそれがいつか歴史になっていればいいな。
コメント
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この新春、息子が地区対抗に出場しました。地区対抗を取り上げて頂いてありがたいです。
ただ、
>「大学選手権にはつながらなかったけどがんばったチーム」が出場
にはちょっと語弊があって、近畿代表はそうなのかもしれませんが他の地区はとにかく
{全国大会である地区対抗に出場する事」
を目標に1年を費やしています。
そこはぜひ理解して欲しいと思います。彼らにはあこがれの大会なのです。
「及ばなかったものの大会」ではなくて、「そこにあこがれてついにたどり着いたものの大会」とご理解ください
大学選手権はおっしゃる通りほぼプロのような選手の大会ですが、地区対抗は国公立大の体育会系ラグビー部も多く、まさにこれが学生ラグビーの神髄ではないかと思います。授業やバイトも忙しく練習も大変ですが、それでも頑張っている選手たちを来年も見届けたいと思います。