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井山七冠に1mmでも近づくぞ!【series1】囲碁の世界にハマり、井山裕太の同人誌を出した女
- 2018/2/4
- おでかけ, 井山七冠に1mmでも近づくぞ!
- 井山七冠, 井山裕太, 佐治るみ子, 囲碁, 珈琲工房
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最近、キテますよね、囲碁。
二度めの七冠に輝き、国民栄誉賞まで受賞した井山裕太七冠(以下、井山七冠)。彼の登場で囲碁界が一気に確変モードに入った感じがします。
しかも井山七冠は東大阪出身。ちなみに記者ミホロボットとはタメです。
めちゃくちゃ取材したいのですが、もはや天の上の存在。気軽に「取材させてよ」なんて言えたもんじゃありません。
少しでも囲碁に詳しくなって、1mmでも近づきたい!いつか絶対取材するんだ!
ということで、詳しい人に話を聞いたり棋戦を見に行ったりして外堀を埋め、最終的には井山七冠のインタビューを目指すコーナーを立ち上げました。
協力をお願いしたのはJ:COM東大阪の情報番組「虹色ねっとわーく」でおなじみ、囲碁大好きアナウンサーの遠藤萌美さん。ネット碁を嗜み、仕事でも囲碁イベントで司会をするインテリ系囲碁マニアです。週ひがからは、囲碁知識は漫画「ヒカルの碁」のみのオタク気質ライター・ミホロボット。自称「中途半端なマニア」こと広くて浅い知識が自慢の編集長・前田がたまに登場。
主にこの3人で、井山七冠に1mmでも近づいていきます。動画と記事で、7~8回くらい連載していく予定。
■井山七冠の沼にハマったきっかけ。見るべきは寝グセ。
さて、手始めにまずは囲碁の世界を知りたい…と意気込んでみましたが、いきなりルールがどうだとか言っても飽きることは目に見えています。
そこで我々は、ある強力な助っ人に教えを乞うことにしました。
そう、この記事のタイトルにもなっている、「井山裕太が好きすぎて、同人誌を出した女」佐治るみ子さんです。「井山裕太の同人誌」って、ものすごいパワーワードだ。一体どんなワールドが待ち受けているのか…。八戸ノ里駅前の「珈琲工房」でお話を伺うことに。1月某日、行ってきました。
遠藤&ミホロボ:はじめまして。今日はよろしくお願いします。
佐治(さじ):お願いします。井山七冠の同人誌を作った佐治るみ子です。
前田:ぼくは4~5年前からTwitterでメッセージをやり取りしてたことがあるから、実はそこそこ知ってる。
佐治:はい、今日は囲碁界と井山七冠について1時間程度とのことだったのですが…多分、全然話し足りなくなると思います(笑)。
前田:資料を大量に送ってくれたんですよね。全部読んでないけど。ていうか膨大な量すぎて無理!
ミホロボ:おお…なんか最初から熱量がすごい。オーバーヒートしてる。
遠藤:まずは佐治さんのことをお聞きしていきましょうか。名刺に「囲碁専門フリーカメラマン・画家」とありますが…。
佐治:アマチュアです。画家は、昔から絵を描くことが好きで、油絵を主に。囲碁は昔から好きだったわけではないんです。
ミホロボ:ほうほう。いつから目覚めたんですか?
佐治:入りは人工知能(AI)だったんです。将棋のAIが強くなって、人間の棋士に勝ったのが話題になってきた頃、将棋が好きな夫から、「そういえば囲碁はまだAIが棋士に勝てないらしいよ」と聞いて。私はIT畑の人間だったので、そこから、AIの囲碁が気になって気になって。ネットで色々調べました。
遠藤:井山七冠から入ったわけではなかったんですね。
佐治:はい。調べてたり棋戦を見に行ったりしているうちに、こんな人がいるんだ、と知りました。それまで絵は自分の夫や子供をモデルに描いていたんですが、井山七冠(注:当時は七冠ではない)を練習で描くようになりましたね。その頃は囲碁の世界のなかでの有名人って感じだったんですが、七冠が近づくにつれ世間的にも大フィーバーして…。ああ~、みんなに知ってほしいけど、知らないでほしかった!
ミホロボ:その気持ち、わかります。目立たないけど好きなラグビー選手がサンウルブズに入って大活躍してほしい。でも遠くに行ってしまう感じがするから行かないでほしい。でも大舞台で活躍してほしい。私が最初に目をつけてたんや!と主張したい、その感じ。
佐治:井山七冠との出会いがこれまた衝撃的だったので、「誰がこの良さをわかってくれるのか…いや、私しかわからない!」と見事に沼にはまりました(笑)。
遠藤:衝撃的な出会い…?
佐治:対局で初めて目の当たりにした時に、めちゃくちゃ気になったんですよね。その…寝グセが。
遠藤:寝グセ!?そこですか(笑)。
佐治:そこです。しかもそれ、後に判明するんですが、寝グセではなくファッションでした。
遠藤:ななな。わざとやっているということ…?
佐治:第34期名人戦で、タイトルを取ったあとのインタビューで自分で立てていたことがわかったんです。えっ、それ寝グセじゃなかったの!?って衝撃を受けました。青春をすべて囲碁に捧げてきた人なので、それ故に、ほかのことはちょっと的が外れてるところが良い。
前田:なるほど。流行りのゲームとか腰パンとか、青春の通過儀礼を通ってこなかった囲碁サイボーグなわけか。いや、ディスってないですよ。むしろ愛くるしい。
佐治:そう。刑事コロンボみたいなんですよ。ひとつのことを突き詰めている姿がかっこいい。
前田:コロンボのたとえ、わかりやすい。
佐治:コロンボは言い過ぎですが(笑)。実際は人格者で、素敵な方です。なんていうか、井山七冠って囲碁に関してはめちゃくちゃストイックなんですよ。彼はじーっくり考えて打つタイプだったんですが、最近は早碁(1日など短時間での対局)でもさらなる成長を見せていてですね…。天才な上に努力もする超人なんですが、それなのに、それなのにその頭!もう、キュンとくるというか、ああ~~…そのアンバランスさが良い!って(笑)
前田:俗物的な言い方をすると、「萌えた」ってやつですね。
佐治:天才っぷりがすごいんですよ。井山七冠って、最初はめちゃくちゃな手を打っているように見えるんです。囲碁やったことないの?みたいな手を打つこともたくさんあります。でも、時間が経つにつれて「この手はここへの布石だったのかー!!」って、誰も想像していなかった局面になっている、それが天才と言われる所以です。
ミホロボ:めちゃくちゃかっこいい。
佐治:ときどきお手本のような「普通の」手も打つんですが、そんな手を打ったら「今日調子悪いのかな」と思うくらい(笑)
前田:佐治さんの井山愛が止まらない。
遠藤:同人誌でもそんな井山七冠の「コロンボさ」やキャラクターを伝える内容が描かれていますね(笑)発行されたのはいつですか?
佐治:2017年の11月です。
ミホロボ:けっこう最近なんですね。
佐治:同人誌は高校のころ親に隠れて作ったことがあるのですが、井山七冠に限っては初めて。内容は本人をモデルとした絵画や漫画を掲載しています。
ミホロボ:「親に隠れて」をさらっと言うところが良いですね。あ、この漫画、Twitterで見たことある!
佐治:ネットで販売もしているので、ぜひ(笑)。ちょうど二度めの七冠を奪取しそうだった時、作ろうと決めたんです。
遠藤:二度の七冠は、囲碁・将棋を通じて史上初ですね。だからこそ、このタイミングで?
佐治:ええ。世紀の偉業に合わせて…今しかないと思い、発行しました。
前田:日本の囲碁界を、いや世界の囲碁界さえも背負っている男。ちょっとトガッた言い方をすると、僕らの持ってる囲碁感や、その先にある日本文化すら変えてしまうかもしれない不世出の巨人。七冠はその通過点にしか過ぎないかもしれないほどの、偉大さ。その”偉業に合わせて”というのが、もう、愛しか感じない…。
■初心者が囲碁の世界を楽しむには?宇宙人ともできるボードゲーム。
ミホロボ:改めて聞くと、七冠ってめちゃくちゃすごいことだと思うんですが…いまいちピンと来ない。初歩的な質問なんですが、タイトルってどれが一番すごいんですか?
佐治:どの「すごい」かにもよりますが、一番賞金額が高いのは棋聖戦。伝統的という意味では、本因坊戦が最も格式高いですね。
ミホロボ:本因坊は聞いたことがある!「ヒカルの碁」で本因坊秀策、出てきました。
前田:佐為がヒカルの前に憑いていた棋士ね。わからない人は「ヒカ碁」を読もう。
ミホロボ:私は完全に「ヒカ碁」世代なので、プロになるには院生にならないといけないとか、先手は黒石からだとか、微妙に知ってるんですよね。この頃ジャンプを読んでいた小中学生は、囲碁とテニスはなんとなくわかるはず。
前田:テニスは「テニスの王子様」の影響ね。
佐治:そうそう、囲碁はルールもシンプルなので、実はそんなに敷居が高くないんです。知らない人からは「対局を見ていると眠たくなってくる」とかよく言われますが…。
遠藤:私がハマったのはネット碁からでしたが、生で見てみたいと思い、大盤解説会に参加したことがあります。それまではすごく固いイメージがあったのですが、全くそんなことない。ジョークもあって何度も笑いました。
佐治:漫才みたいですよね。だいたいは男性棋士が解説、女性棋士が聞き手を務めることが多いですが、けっこう「無駄な情報」を話してくれます。この棋士は昔こんなエピソードがあって…とか。そこをとっかかりにしてから徐々にゲーム自体に興味を持って…というのもひとつの見方です。
ミホロボ:確かにそれは楽しい!
佐治:将棋とよく比較されますが、将棋は羽生善治名人の写真集やムック本が出たりしてるんですよね。でも、囲碁界はそこまでは切り込んでいないんです。歴史が長いゲームなので、いろいろとハードルが高いんだと思うんですが。なので、こうなったら自分で楽しめるものを作るしかないな!と。
遠藤:それが佐治さんが同人誌を作る原動力になっているんですね。
前田:なるほど、そもそもエンタメ的資源が少ないのか。
佐治:今、日本では将棋の方が人気ですが、海外では圧倒的に囲碁が人気なんです。韓国や中国が特に強い。囲碁って、「宇宙人ともできるボードゲーム」だと私は信じてるんですね。
遠藤:言わんとしていることは、わかります!
ミホロボ:これに関しては全然わからない。
佐治:囲碁は数学的な側面があるんです。もしかしたら、数学は宇宙人にも通用するかもしれないし、地球独自のルールが多い将棋やチェスより、一緒に遊べる可能性が高いんです。そういう意味でも宇宙人とでも遊べるボードゲームなのかな、と。
ミホロボ:な、なるほど…。囲って陣地を取る、シンプルなルールですしね。
佐治:静かな印象があるかもしれませんが、囲碁って一手一手が戦争なんですよ。相手をどこから攻撃して、陣地を取るかという面もある。例えば、「天元」ってあるんですが…。
ミホロボ:天元!「天地明察」っていう歴史小説で、主人公が天元からはじめる打ち方を研究してたので覚えています。
前田:覚え方がいちいちオタクっぽい。V6の岡田准一が主演で、映画にもなってたなぁ。
佐治:最初の一手で天元からはじめることは、あまり良い手とはされていないんです。例えば碁盤が実際の戦場だとします。そこで、わざわざ敵に囲まれやすい中心に行きませんよね。
遠藤:戦場だと、外堀から埋めるのがりセオリーですね。
佐治:そう!よっぽどの作戦を立てないと、天元からはじめるのは難しい。なので、できるだけ隅から攻めていく。
ミホロボ:おおお、しっくり来ました。実際の戦場に例えるとわかりやすい。
佐治:そう、少ないルールで楽しめる。そこが囲碁の魅力のひとつだと思います。私が思う最大の魅力は「美しさ」だと思うのですが、それはまた追々。
遠藤:確かによく囲碁は美しいと形容されますね。
前田:ただ、やっぱり日本は囲碁の楽しみ方に関してまだまだ発信が少ない。なので、自炊をして自ら楽しさを作っていってるんですね。すごい、ほんまもんやこの人!
佐治:えへへ…ありがとうございます。
ミホロボ:とりあえず私は、ヒカ碁再読から始めます。
井山七冠と、囲碁の世界の魅力について十二分に知ることができた座談会。佐治さんから「今の時期なら、LG杯に行ってみるのが良いですよ」とアドバイスを受け、次回は実際の棋戦を楽しんでみたいと思います。
さあ、未知なる世界にLet’s GO!
佐治さんのインタビューYoutube動画はこちらから
今回話題になった佐治るみ子さんの同人誌「七冠王」を読者の方に抽選で5名様にプレゼントします。
応募締切は2月18日(日)23:59まで。ご希望の方は、ページ最下部申し込みフォームに記載し、応募ください。
同人誌「七冠王」の購入はこちらから
■座談会会場となったお店:珈琲工房
住所:東大阪市下小阪5-1-21山三エイトビル1-A
TEL:06-6728-7338
営業時間:平日7:00~18:30、土7:00~18:00、日祝7:00~17:30
文豪・司馬遼太郎が通った喫茶店。オールドファッションな雰囲気が居心地良し。
コメント
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とっても面白かったデス!
囲碁に興味をもちました!またこの佐治さんを取材してください!
井山先生が登場するその日まで応援しています!
同人誌ください(直球)
ありがとうございます。また佐治さんは登場します。
同人誌は応募してください(笑)