「錫」と言われて想像するのは、週ひが第2オフィスと名高いバーで飲むジントニックのタンブラー。「錫器に入れると味がまろやかになる」くらいは聞いたことありますが、魅力って何でしょうか?
東大阪の錫器作家今井章仁さんの個展「今井章仁 錫器展」が奈良のギャラリー「あーとさろん宮崎」で行われ、立体物好きの記者が取材へ行ってきました。
少し緊張しながら古民家を改築したギャラリーに入ると、数十点の様々な形の錫器が静かに並んでおり、趣のあるムード。ジョッキに小皿、お茶道具に重箱までが銀色に光って、アクセサリーのように木造建築の部屋を彩っています。
「錫器は作り手が少ないんです。大阪で製造販売しているのは3社だけなんですよ」と現れたのは今回の主役、今井さん。
家業として錫器の製造販売を代々続け、20年ほど前から作品を展示会へ出品されています。
「今は伝統工芸品として指定されていますが、昔は近衛兵の退職祝いや軍艦の観艦式などの贈答品にもされていました。お酒道具によく使われていましたね」
ということは、お酒を入れると味がまろやかになるというのは本当なんですね!
「ビールを注ぐと泡が細かくなるのは、イオン効果があるからと言われてます。飲むと、味の変化がかなり分かりますよ。でも、実は金属として研究はほとんどされておらず、科学的な証明はないんです」
え、そ、そうなの!?
マイナーな金属、錫。それでも今井さんが作品を作り続ける訳は何でしょう。
「若い頃、作品をグループ展に出していくうちに、僕の作った錫コースターを買って下さった方がいたんです。それが、すっごい快感になって、気づけば20年(笑)。僕自身、美術品として見てないんです。使ってみて初めて分かるものなので、鑑賞するよりもどんどん使ってほしいですね」
実際に、実用品として購入する人も半数近くいるのだとか。熱伝導性が高く、温める・冷やすの調節がしやすいため、料理人が購入するケースも多いんです。
錫って柔らかくて繊細なイメージがありますが、思っているより頑丈で普段使い向き。
そうそう、以前ランチクイズでご紹介した小阪の一品料理屋「よしの」でも、今井さんの作品が料理の器に使われています。
「錫器の作家って、今まで存在しなかったんです。作品を作り続けることによって、『こういうやり方もあるんだよ』と道をつけていきたいですね」と、多様な錫のあり方の一つとして、作品を残していく今井さん。
「使う伝統工芸品」として、生活の一部に取り入れていく。それが、文化を知るということなのかもしれませんね。
展覧会は6月26日~7月6日まで。お越しの際は、生の錫器を肌で感じて下さいね。
文・写真:@mihorobot
イベントデータ
名称:今井章仁 錫器展
場所:あーとさろん宮崎
住所:奈良市高畑町812
TEL:0742-23-2588
期間:2014年6月24日(木)〜7月6日(日) ※6月30日(月)のみ休館
時間:10:00~18:00 ※最終日は17:00まで
駐車場:あり(2台)
公式HP:今井章仁BLOG http://imai-suzu.jugem.jp/
あーとさろん宮崎 http://www1.kcn.ne.jp/~art-miya/index.html
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