マシレワの夢そしてライナーズの希望がいよいよラストステージ トンガ戦で日本代表としてパフォーマンスを発揮できるか

   

今年はラグビーワールドカップイヤーだ。9月8日よりフランスで開催される4年に一度の大舞台に向けて、日本代表が7月29日に花園ラグビー場でトンガ代表と対戦する。本番に向けて、メンバー絞り込みの最終段階だ。

ラグビーには試合の日の2日前にメンバーを発表する習慣がある。(リーグワンなどではキックオフの48時間前)
我らが花園近鉄ライナーズから日本代表に参加する唯一の選手、セミシ・マシレワが11番でメンバーに名を連ねた。8月15日とされる最終メンバー発表に向けて、当落線上にいるであろう彼にとって最後のアピールの場になるかもしれない。

マシレワは彗星のようにライナーズに現れた。2017年、チームから出た新加入選手を知らせるリリースに彼の名があった時、気にとめる人はいなかった。
直前の1シーズンのみスーパーラグビーに所属した25歳。はにかんだ笑顔が印象的で人の良さがにじみ出る好青年。反面、前年まで在籍したスター選手、アンドレ・テイラーの代役としては頼りなげにも見えた。ところが。

ファンに初めてプレーを披露した2017年神戸製鋼での練習試合。

すぐにマシレワはチームの中心になる。加入してすぐの春の練習試合で規格外のスピードを連発した。スペースがあればもちろん、ディフェンスの狭いギャップを抜けていき、相手チームからはもちろん自チームからもファンからも驚きの声が上がった。トライ後に腕で蛇の形を作る「スネークポーズ」とともに、瞬く間に愛されていく。

シーズン終了後、彼は「自由にプレーできる環境がうれしい」と話す。図抜けた個人能力にフルベットせざるを得なかった、ライナーズのチーム事情にブレイクの要因があったのかもしれない。

マシレワの1年目、2017年度のシーズンはライナーズにとって史上最悪の年だった。2018年1月、トップリーグからの降格が決まりオフには坪井監督が解任。マシレワの個人技でしかトライが取れず、彼のパフォーマンスは絶好調ながら、勝利につながらないもどかしさもあった。

ミホロボット号泣!

そんな2018年3月、南半球のスーパーラグビーに参戦する日本代表に準ずるチーム「サンウルブズ」が彼を招集する。
代表の要件「3年連続居住(現在は5年)」を満たしていなかったが、サンウルブズでなら出場できる。

デビュー戦でダミアン・マッケンジーを振り切ってトライを奪う。

サンウルブズデビュー戦で、いきなりトライを奪うマシレワ。スネークポーズも世界中に披露し、ドンドン知名度が上がっていく。一方で、ライナーズでも見られた「脆さ」が目立ってくるのもこの頃だった。

抜く力は世界有数。しかし、抜いたあとのボールキープのスキルが足りず、チャンスシチュエーションが逆にピンチになる。不用意な反則をしてしまい、味方に数的不利を与えてしまう。ディフェンスが脆く、1対1で簡単に抜かれてしまい取ったトライ以上の損失を覚悟しなければならない。
セミシ・マシレワの持つ茶目っ気とともに、彼のプレーの怖さも知らしめられるようになる。

週間ベスト15にも選ばれる大活躍。

2019年、日本で行われたワールドカップには資格なく選ばれなかったマシレワ。時をおかず、新型コロナ禍が猛威を振るうと外国人選手は次々に帰国する。その中でもマシレワは、花園に残り続けた。日本代表に必要な5年連続居住を満たすためだ。

その甲斐あって、2021年7月に日本代表デビュー。2試合に出場した彼には、2023年のフランスへの道が見えかけていた。積み上げてきたものが、大きな成果となってようやく形になってきた。
しかし、2022年ライナーズでの公式戦で、脚に大けがを負う。前十字靭帯と半月板の損傷。ワールドカップ出場が危ぶまれるだけではない。怪我が完治したとして、以前のパフォーマンスが戻るのかも心配になるレベルの事態だ。

結果、セミシ・マシレワは進化して戻ってきた。若干細見だった体格もサイズアップし、怪我でチームトレーニングができない間、毎日ジムを継続していた成果が見えた。
慌てるとペナルティを犯してしまう精神的な脆さも、今はそこまで気にならない。ディフェンスはまだ課題があるが、サイズアップしてからは「自信のなさ」を感じることはなくなった。あとは理解を加速するだけだ。ハイボールキャッチは、完全に強みになっている。

 

2023年、リーグワンのシーズンを終えたマシレワは、代表合宿に無事招集された。7月15日のAll Blacks XV戦(準・ニュージーランド代表)ではキャップ対象外の試合ながら2トライをあげて存在感を示した。

紆余曲折がありすぎる、セミシのこの6年に渡る旅路。幾度となく世界中の強豪からオファーがあるも、
「拾ってもらったライナーズの一員として、日本代表になる」
と移籍しなかった彼が9月にフランスで躍動し、日本中を熱狂の渦に巻き込んで日本一のスターになることを信じてやまない。

そのためにも、まず7月29日。彼が選び続けた花園で、誰も止められないスピードで、満員の観客と日本中のファンを魅了してほしい。
世界を相手に、無邪気な笑顔で、トライパフォーマンスを。

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編集長 前田

編集長 前田東大阪探検隊隊長・編集長

投稿者プロフィール

特定非営利活動法人週刊ひがしおおさか代表編集長兼東大阪探検隊隊長。
ふとした思いつきからはじめたWEBサイトが、13年。
これからは地域に嵐を呼びます。覚悟しろ!

好きなモノ:花園近鉄ライナーズ、阪神タイガース、競馬、ゲーム、プラモデル、楽でお金になる仕事。
嫌いなモノ:愛、本物

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