若江城まで墨だらけ!?大商大で拓本展が開催中。マニアックな世界を堪能しよう

   

世の中には「なんでそこに目を付けたんですか」というマニアックな趣味がごまんとあります。最近のトレンドでいうとダム巡りやマンホール探索なんかでしょう。
今回スポットを当てたいのは、「拓本」。魚拓の「拓」といえばわかりやすいかもしれません。
ある日、こんなチラシが週刊ひがしおおさかに届いたのです。

聞き慣れない言葉ですが、拓本とは石碑や金属器などに紙をあて、刻んである文字・模様を墨でうつし取ったもののこと。なんというコアな活動。めちゃくちゃ週ひが向きです。

左から拓本、拓本を写した石碑の写真。石碑では見えにくい文字も、拓本ならきれいに浮かび上がる。

まずはネットで調べてみると、「大昔は石碑に書いてあることを写し取って持ち帰り、研究の教科書的に使っていた」とのこと。でもでも、今は活版印刷どころか情報スーパーハイウェイ時代。過去の銘文もネットでなんでも検索できちゃう。そんな時代に拓本…って?

疑問を残したまま、企画展にやってきました。
大阪商業大学商業史博物館で、6月4日(月)から開催中の春季企画展「石に刻まれた文化財」です。

博物館は「谷岡記念館」の中。J:COMさんの車が止まっている。先を越された!

商業史資料室・郷土史料室などの常設展示と企画展示室から成り立つ商業史博物館。昭和初期建造の校舎を利用しており、今も当時の内装のままで保存されています。

谷岡記念館2階へ。「大阪商業大学商業史博物館」の文字。

電球が灯るレトロな廊下を歩いていくと、「企画展示室」の表示版が。

おそらく当時は「◯年◯組」と書かれた札がかかっていたのでは。

拓本に関してはネットで調べただけの記者ミホロボット。
来てみたものの、楽しめるのかなぁ…と怖気づいていると、主催の「中河内拓本クラブ」のみなさんが出迎えてくれました。

有志で結成された拓本クラブ「中河内拓本クラブ」。1984年から活動を続けています。

一緒に鑑賞しながら、拓本についての基礎知識を乞いました。
拓本って、どんな工程を経て作品になるんでしょう?

種田山頭火の句碑やカンボジア・アンコールワットの石碑など約40点が展示。

「拓本には湿式と乾式、2つの方法があります。うちは湿式ばかりだけどね」と専門的な用語を教えてくれるのは、メンバーの峰本さん。
湿式…つまり水に濡らせて拓本するのですが、墨を直接石碑に付けるわけではありません。
石碑の表面に張り付けた紙を上から水でぬらし、墨のついたスポンジでたたいて写し取る方法です。

「片方の耳が聞こえなくて…『半分青い』やろ」と旬のネタで笑いを取る峰本さん。主に種田山頭火の句碑を拓本。

アンコールワットは、世界遺産に登録される前にお願いしたそう。今となっては拓本できないため、超レア。

特に難しいのは、拓本に入るまで。石碑の所有者に許可を取るときなんだとか。
「所有者がわからなくなっている石碑は、まず持ち主を探すところから入らなきゃならないことが多いですねぇ。それに、『墨で汚れる』と勘違いされることもよくあるので、拓本にかかるまでが一苦労です」。
なるほど、拓本あるあるなのかもしれません。

さて、基礎を教えてもらったところで、最も東大阪っぽい作品を鑑賞。

ずらりと並んだ作品。「旧若江城跡」の字が力強い。

企画展の目玉のひとつ、若江城跡石碑の拓本を鑑賞します。
まず東大阪、それも若江に城があったということから説明しなければならないのですが、ウィキペディアにも詳しく載ってるくらい有名です。

若江南町、若江公民分館向かいの若江城跡。

拓本にすることで、見えにくかった字が鮮明に浮き上がっています。
ふ~む、う~ん、なんとなくすごいことはわかったのですが、どう鑑賞するのが正解なんだろう?と首を捻っていると…。

真ん中の拓本に注目。

若江城の顛末が書かれた拓本をよく見ると、左下だけ欠けていることがわかります。展示されている実物の写真を見比べると、こちらも左下が欠けています。

なんか人為的だ。誰かがえぐり取っているように見えますが、原因は不明。

「ここだけ欠けているって、不思議でしょう。そういった謎を、拓本を通して調べていくのが面白いんですよ。」と峰本さん。まるでミステリーハンター。
なるほど、拓本の楽しさが少し分かってきたぞ。

この石碑にも欠けた文字が。

実は年々愛好者が減っているという拓本。河内クラブもピークの80人から、今は8人の在籍メンバーです。
「廃れゆく活動」と苦笑する峰本さんですが、ご本人たちは「次はどこの石碑を拓本する?」と興味が絶えない様子。
近畿にとどまらず、全国、果ては海外まで拓本にいく人。さらには押し花や和紙で装飾し、銘文に「新たな意味」を付与する人。
「河内拓本クラブ」のメンバーは、印刷文化を趣味に消化するスーパーハイソ趣味軍団だったのです。

押し花と和紙で、装飾された作品。

「歩いて運動にもなるし、そうやって歴史を知るのが楽しいね」と、スッと出てきたのは地図。

峰本さんが出してくれたのは、メモや地図や写真が一つにまとまった「調査記録」。今までどのルートを辿って石碑にたどり着いたのか、句碑にはどんな意味があるか…など、インターネットではわからない情報がぎっしりとつまっているのです。そこには、拓本でしか味わえないロマンを感じます。

特に種田山頭火の句碑をたどって拓本する峰本さんは、「讃岐には山頭火の句碑が集まっている地域があるんです。松尾芭蕉のものでもここまでまとまっている地域はありません。」と足を使って得た成果を話します。
つまり、フィールドワーク。歩き、拓本する石碑の歴史を調べ、フィードバックする。
ネットでなんでも検索できるこの時代に、あえて拓本。拓本でしか読み取れない歴史が、意味があるのですね。

ひとつの拓本から、文字だけでなく歴史をも浮かび上がらせる面白さ。興味をもったあなたは、ぜひ企画展に訪れて「中河内拓本クラブ」の話を聞いてみて。
展示期間は6月23日(土)まで。9日(土)・16(土)・22(金)には公開講座も開催されます。マニアックな拓本の世界へ、いざ!

文化への造詣が深まった気がするぞ!

春季企画展「石に刻まれた文化財」
開催期間:6月4日(月)~6月23日(土) 10:00~16:30
休館日:日曜
会場:大阪商業大学商業史博物館 企画展示室
入場無料
連続講座:6月9日(土)・16(土)・22(金) 各日10:00~11:00
※連続講座の詳細は公式サイトよりご確認ください

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mihorobot

mihorobot東大阪探検隊・記者

投稿者プロフィール

生粋の八戸ノ里っ子。人気の八戸ノ里東小・小阪中学校校区に住んでいる。
取材へ行けば、同級生のお父さんがやってるお店だった・・・ということが多々あり。
尊敬する人は藤子・F・不二雄先生。

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