大林宣彦監督作品「この空の花 長岡花火物語」 感想記

   

新人探検隊員の登場です。近畿大学に通う甲本由衣さんが、話題の大林宣彦監督作品「この空の花 長岡花火物語」を鑑賞した感想記です。

 

この作品は”みんなが爆弾ばかり作らずに花火を作っていたら戦争なんか起こらなかっただろうなあ”という画家の山下清氏の言葉から始まります。

まず目を引いたのが、長岡市の風景描写の美しさです。田園風景や町並み、静かに流れる川の様子、更には空の様子まで明確に撮影され、思わず同地を訪れたくなったほど。

大林宣彦監督がこの映画を通して伝えたかったこと、それは”既知の事実の再確認”、そしてよりリアリティのある”声”なのではないでしょうか。私は戦争を知識として知ってはいますが、現在の生活とは無縁のことだと考えていました。しかし、作品に出てきた言葉に「まだ戦争に間に合いますか」とあります。最初は意味が分からなかったのですが、話が進むにつれストレートに心に響き、戦争を過去のこととしてとどめるだけではいけないのだ、と痛感しました。「戦争の話を聞くのは心が痛い」「知っているけれど聞きたくない」と目をそらし続けてきた現実に、いや応なく向き合わされました。

最後に、爆弾と花火は構成が一緒なのに、なぜ人を殺(あや)める手段・人を感動させる手段と分かれてしまったのか? 夜空に咲く花は人々の心を感動させるのに、夜空に散る爆弾は人々の心を深く傷つけてしまう。大林監督は、あえて同じ構成のものを取り扱うことで、戦争というものの悲惨さと、それとは対照的な花火から生み出される人々の感動を伝えたかったのではないだろうかと思いました。

「この空の花 長岡花火物語」、それは花火だけでなく長岡の人々の思いが空に打ち上がり、更に散開して多くの人々に伝わる様子ではないでしょうか。2週間という上映期間ではあまりにもメッセージを伝えるには時間が少な過ぎます。この感想記も私が感じたこともほんの一部です。皆さんもぜひ布施ラインシネマに足を運び、作品から発信される様々なメッセージを直接感じてほしいと思います。

取材・文 甲本由衣 Twitter:@24_yuichun

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