私が小学生の頃、社会人ラグビーでプレイしていた父がこう言っていました。
「ラグビーの試合で一番走ってるのはな、レフリーやねんで」
そうです。選手に合わせてグランドを駆けまわり、最も運動量が多いと言っても過言ではないのが、レフリーなのです。
また、ラグビーがとてもコンタクトの多い競技ですので、レフリーがしっかりと試合をコントロールしないとけが人が出たり試合にならなかったりします。
今回の「東大阪の顔」は東大阪市出身で、名門市立英田中学ラグビー部でコーチをする傍ら、関西レフリー界の期待のホープでもある山本篤志さんにお話をうかがいました。
英田中学、3年生最後の大会に挑む直前というお忙しい時に取材を受けてくださいました。
週刊ひがしおおさか前田(以下前田) はじめまして。チームとして大変な時期に、ありがとうございます。
山本さん(以下山本) いえ、子どもたちはやることを理解していますから、少しくらい私がいなくても大丈夫ですよ。
前田 さすが名門ですね。今部員は何人いらっしゃるんでしょうか。
山本 53人※です。
前田 53人と言うと、相当な・・・。
山本 そうですね。今どこも部員数の減少に悩んでいる中、うちは恵まれていますね。ナイター設備もありますし。
前田 それはやはり、花園が近くにあるということが大きいでしょうか。
山本 あとOBの方や地元の皆さんの培ってくれた伝統も大きいんじゃないでしょうか。
前田 山本さんも英田中学ラグビー部出身なんですよね。
山本 花園ラグビー場が校区内でした(笑)
前田 それはすごい(笑) やはりご自身がラグビーを初められたのも、花園の影響は大きかったでしょうか。
山本 そうですね。うちは父がラグビーをやっていたとか言うわけでもなく、ラグビースクール※に入るきっかけも近所の方に誘われてですから、大きかったと言えますね。
前田 私、先ほど「はじめまして」と言いましたが、私はラグビー場でお会いしています。お見受けしていると言ったほうがいいんでしょうけど(笑)
山本 笛を吹いている※ときですね(笑)
前田 見るたびに「このレフリー若いなぁ」と思っていたのです。失礼ですがおいくつですか?
山本 26歳です。大学を出て4年です。
前田 お若いですね!ラグビーの有名レフリーといえば相田さん、原田さん、谷口さんと比較的おじさんに近い方が多いので、山本さんは際立って若く感じます。
山本 ありがとうございます。でも僕と同じ歳も結構いますし、もっと若い人も頑張っていますよ。
前田 なるほど。現在は英田中学校のコーチをされているんですね。
山本 はい。英田中学で保健体育科の教員をしながら、ラグビー部のコーチをしています。平日は先生、コーチ。週末にコーチとレフリーです。
前田 1人3役。やりくり大変そうですが。
山本 時間的にはしんどい時もあります。でもそれぞれが完全に独立しているわけじゃありませんから。
前田 といいますと。
山本 例えば学校で、何か問題が起こったとします。問題が発生するキーになったことは誰から見ても悪いことだとわかります。でも本質は問題が発生する学級の状態にありますよね。そこをマネジメントするのが先生の仕事じゃないですか。
前田 確かに。
山本 レフリーも同じだと思うんです。試合中、反則を裁くことも重要な仕事ですが、それ以上に試合中にその反則が起こらないようにマネジメントして、お互いのチームが気持ちよくプレーできるようにする。それがレフリーの仕事です。だから先生もコーチもレフリーも、すべての仕事がそれぞれ高め合える。僕はそう思っています。
前田 ・・・すごいですね(笑)
山本 え、なにがですか。
前田 なんか、すごく真面目な話になりました。週ひがらしくないって、読者に言われそうです(笑)
山本 そうなんですか(笑)
前田 うかがっていると、今は先生、コーチ、レフリーすべて充実されているんだと感じます。でも、、、はじめからレフリーを目指すラガーマンをいないですよね。山本さんがレフリーになろうと思ったきっかけはなんですか?
山本 言いにくいんですが、、、実は嫌々と言いますか。
前田 お、こちらは週ひがらしい話ですね(笑)
山本 僕とにかくラグビーが好きすぎて(笑) ラグビーに関わる仕事がしたかったんです。だから大学出てすぐ、プロコーチになろうと思って。
前田 プロコーチ、と言いますと?
山本 選手ではプロになれなくても、コーチでならという思いがあったんです。大学は4年間天理大でしたが、縁あって大学卒業後に1年間大学に残ってコーチをしていました。その際に「コーチをするなら、チーム内マッチなどでレフリーをしなきゃいけない時もたくさんあるだろう」と周りから言われて、ホント渋々C級の資格を取りました。
前田 レフリーに魅了されたわけではなくコーチの業務にレフリーの資格が必要だから。
山本 ですから、レフリーに関しては、全然積極的ではありませんでした。
前田 でも今はトップレフリーを目指している。
山本 はい。トップレフリーになりたいです。
前田 転機は何だったんでしょう。
山本 うーん・・・何だったんだろう。合宿・・・ですかね。
前田 ラグビーで合宿というと、菅平※ですね。
山本 C級を獲ったあとはレフリーに関しては必要なことしかしていませんでした。それがB級を所得した後すぐに先輩レフリーから菅平に来ないかと誘われました。
前田 連れて行ってくれた。という形ですね。
山本 夏の菅平って、色んな学校が集まってくるんです。全国の名だたる高校がそこら中に。だから普段では考えられない数の試合が行われて、慢性的なレフリー不足です。
前田 レフリーの数は限られてますんもんね。
山本 普段ならC級はC級、B級はB級の試合があるんですが、菅平では関係ないですから。それこそ「吹けるんやったら吹いてよ」みたいな(笑)
前田 なるほど。公式戦じゃないから。
山本 そこで花園でベスト4に残るような学校のレフリーを何試合もさせてもらって、これは面白いなと。
前田 手応えを掴んだ。
山本 なんて言うんだろう。両チームのコーチに「よかった」と言われたのも嬉しかったんですが、何よりも一緒に試合が作れた気がしたんですよ。それで一気にハマっちゃいました。
前田 「一緒に作れた」というのは、とてもラグビーらしい感じ方ですね。現在は主にどんな試合のレフリーをされているんでしょうか。
山本 今はシーズンですので、毎週どこかでレフリーをしています。最近ですと、関西大学Cリーグ、中学の近畿大会、高校の大阪府予選などです。
前田 山本さんは選手時代、どんなプレーをされてたんでしょうか。
山本 ポジションは、スクラムハーフやスタンドオフ※。他にも色々・・・。良く言えばオールラウンドプレーヤー。悪く言えば、便利屋で器用貧乏。
前田 またまたご謙遜を。
山本 本当に選手としては中途半端でしたよ。 高校は報徳学園でしたが、高3の県決勝直前に怪我をしてリザーブ※。チームはそれまで15年連続で花園に出場していたのに、関学に負けて出場を逃してしまいます。僕の高校ラグビーはリザーブで終わりました(笑)
前田 あ、あの年ですか。それは・・・。
山本 ・・・気を使わないでくださいね(笑)
前田 中学時代は、聖地花園がすぐ近くにあるという環境ですよね。
山本 多くの東大阪市民がそうだと思うのですが、中学までは「そこにあって当たり前」でした(笑) それが高校では近くて遠い花園でした。
前田 ん、んーー(笑)
山本 「家のすぐ近くなのに俺はここに来られへんねんや」って。
前田 となると、今でも花園に対する思い入れは強いのではないですか。
山本 人一倍強いと思います。コーチをしている時も「なんとかこの子たちを花園の舞台に立てるように」と思いますし、レフリーとしても花園で笛を吹きたいという思いは強いですね。
前田 今年の高校大会ではレフリーをされるんですか。
山本 まだキャリアが浅いので、レフリーはないですね。アシスタントレフリー※はいつでも出来る体制を整えて、協会にもOKと伝えてあります。去年までは資格がなかったので、ドキドキしてます(笑)
前田 それはドキドキしますね(笑) では当面は花園で笛を吹くのが目標ということでしょうか。
山本 そうですね。期待していただいている部分もありますから、一年でも早く花園でレフリーができるようにしたいです。選手としては立てませんでしたから。花園で成長した教え子の試合を吹けたら、最高ですよね。
前田 そして、2019年ですね。
山本 それもありますが、まずトップリーグです。トップリーグで高校時代の同級生が活躍しているんです。彼には「俺が吹くまで現役でいろよ」って言ってるんで、意地でもそのステージに立たないと。その後に2019年ですね。花園でやるワールドカップでレフリーとして活躍する。それを目標にしています。後7年ですから、全然時間が無いですよね。
前田 それは、、、僕らもワールドカップ誘致頑張らないと(笑)
山本 よろしくお願いします(笑)
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