「綿実油」(めんじつゆ)って知ってますか?サラダ油の一種で、その名の通り綿の実から採取される油のこと。東大阪が位置する河内地方では、伝統品「河内木綿」の栽培が有名ですね。
さて、そんな河内地方には日本で唯一の綿実搾油メーカーがあるのです。今回は、東大阪から近鉄電車で15分ほど、柏原市の「岡村製油株式会社」(以下岡村製油)へ工場見学に行ってきました!
菜種油やコーン油、化成品(化学品)などを取り扱う「岡村製油」。綿実油だけで、実に50種類以上の商品数です。
「綿実油は栄養価も高くビタミンEが豊富なんです」と瀧澤さん。
実は「サラダ油の王様」と呼ばれる綿実油。臭いがほとんどせず、どんな食材にも合うのが特徴です。キャノーラ油(一般的な菜種油)比べても高級品ですが、質の良さを知れば納得!(例えば一斗缶では菜種油が3000~4000円に対し、綿実油は6000〜8000円ほど)
綿実油の話を聞きながら工場内へ。まず目に飛びこんできたのは、真っ白な山!ブラジルやアメリカなどから輸入された綿実(綿の種)です。これが油の原料になります。
さらに進むと、奥には「リンターマシーン」なるものが。繊維と実を分ける機械です。油になるのは実の部分。分離された短い綿は「リンター」と呼ばれ、クッション材などに使用されます。
分離を終えると、脱穀して実を殻と核(中身)に分けます。搾油の原料となるのは核。殻はキノコの栽培材料にも使用されます。リンターや殻など、綿ってどの部分もあますところなく使えるのか…と感動!
続いて案内してもらったのは圧搾室。いよいよ綿実から油を搾っていきます。蒸釜で熱された核を圧搾機へ。一番搾りの「圧搾原油」が出来上がるのですが、色は真っ黒!ここから脱酸・脱臭・脱色などの工程を通し、綿実油が完成されます。ちなみに、油を採った後の粕は、肥料や試料に使われるのだとか。
綿実をマシーンにかけ、繊維と実を分離→実の殻と核(中身)を脱穀→核から油を圧搾→脱酸・脱臭・脱色し、綿実油が完成。
簡単に書きましたが、この間には脱酸や水洗いなど製品によっては15もの工程を経なければなりません。ここまで大変な製油ですが、「綿実にこだわるのは綿と柏原に思い入れがあるから」と瀧澤さんは笑います。
今年で創業123年の「岡村製油」。本社・工場をかまえる柏原市は、江戸時代から河内木綿の産地でした。「岡村製油」もそんな綿畑のそばで搾油できる小さな工場から始まったそう。木綿産業が栄えていた頃は長瀬川沿いにたくさんの繊維メーカーや製油工場が並んでいましたが、今ではほとんどなくなりました。
なぜ「岡村製油」はここまで長く続いているのか?その答えは、応用技術にありました。
「製油の技術を使って、こんなものも作っています」と見せてもらったのは、「D-キシロース」。ガムで有名な「キシリトール」の原料です。
綿実の殻から採れる成分を分解することで生まれる「D-キシロース」。練り物の色づけや、調味料の香りづけなどに使用されます。
さらに、綿実油の精製法をヒントに開発された「高級二塩基酸」の開発も。世界でもオンリーワンの、科学原料です。接着剤や潤滑油まで、用途はさまざま。
国内唯一の綿実搾油メーカーとして確固たる地位を築きながら、油の技術を応用し新たな製品を生み出す。それが、「岡村製油」があり続ける理由なんですね。
最後に、工場のすぐそばにあるアンテナショップ「コットンハウス」に案内してもらいました。綿実油をはじめ、柏原名産のぶどうを使ったドレッシングなどが置かれ、誰でも直接購入することができます。
綿実油をキーワードに、常に新しい道を探しつづける「岡村製油」。河内の地から、「油の明日」の知恵を搾る。そんな可能性を感じた見学会でした。
■岡村製油株式会社
住所(本社・工場):大阪府柏原市河原町4-5
TEL:072-971-3181
従業員数:110名(2015年7月時点)
※今回は特別に工場見学させていただきました。一般見学は行っていません。
■コットンハウス
住所:上に同じ
TEL:0120-016-510
営業時間:10:00~16:00
定休日:土日祝
駐車場:なし
アクセス:近鉄大阪線法善寺駅より徒歩6分
※コットンハウスはどなたでもご利用いただけます。
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