東大阪の顔!スペシャル 漫画家 ふなつ一輝 (3)

 
   

今や日本が世界に誇るカルチャーの一つになった漫画。コンビニでも雑誌コーナーの大半を漫画が占め、通勤、通学時でも漫画雑誌を広げている光景は当たり前のようになっている。
今回の「東大阪の顔」は人気青年漫画雑誌週刊ヤングジャンプにて、「華麗なる食卓」を連載中で東大阪市出身(埼玉県所沢市在住)でもある、ふなつ一輝先生に漫画家としてデビューされるまでのお話を伺った。5回シリーズの3回目。


お忙しい中お時間をいただいたふなつ一輝先生

週刊ひがしおおさか前田(以下前田) 高校卒業後の進路はどうされたんでしょうか。

ふなつ一輝(以下ふなつ) 成績が悪かったので就職しました。本当に「絶対漫画家になる」と決めてたし、なれるって思ってましたから、少しでも漫画のプラスになるようにと考えて印刷会社に勤めたんです。

前田 徹底してますね。

ふなつ 正確に言うと製版会社ですが、そこで2年勤めてお金貯めて、20歳になったらその資金持って東京へ行って漫画家になろうって。


東大阪市にある紙文具団地 モノづくりのまちとして有名な東大阪市だが、
卸売業団地が市内各地にあり流通業そして印刷業のまちでもある。

前田 やはりそこまで考えないと、夢に描く職業には就けないんでしょうか。

ふなつ それがですね、勤めてみると同僚や先輩後輩と働いたり遊んだりしてるのが楽しくなっちゃって(笑)。2年のつもりが6年も勤めていたんですよ。サラリーマンも悪くないかなって…。

前田 なるほど。少し安心しました(笑)

ふなつ それに勤め出してから2本投稿しましたが、その後描かなくなっちゃったんですよ。遊ぶのも楽しいし、こんなんもええかなって。いわゆる「安定」ってやつですよね。

前田 描かなくなったのはその2本が評価されなかったからですか。

ふなつ 1本は下の方の賞が取れて、担当もついたんですが、2本目がダメで、そのまま流されるままにです。

前田 なるほど。そうなってしまうとまた始めるには切っ掛けと大変なエネルギーが必要ですが、何か大きな出来事があったんでしょうか。

ふなつ うーん、これを言うと信じてもらえないことが多いので、先に「本当です」って言ってから話すんですが(笑)。いつやったか、大きな証券会社がつぶれましたよね・・・。えーと。

スタッフさん 山一ですね。

※山一證券:かつて四大証券会社の1つに数えられた証券会社。つぶれることがないと信じられていた大手証券会社の倒産は、日本経済の転換期を告げる形となった。自主廃業決定直後の記者会見で、号泣しながら「社員は悪くありません!」と野澤社長(当時)が話す姿は大々的に報じられた。

ふなつ あ、そうそう。山一證券が倒産した時にね。あの時すごく自分の将来が不安になったんです。当時勤めていた会社は小さい会社で、結婚したい彼女もいて、自分はこのままここにいていいのかなって、思ったんですよ。ここにいるのはまずいなと。会社変えようかと考えたんですよね。

前田 私がサラリーマンを辞めたのもこの時期です。世の中が変化している。確かに今までの価値観は通用しなくなる事を宣告されたような出来事ではありました。

ふなつ ですよね。そんな不安な時に、会社の後輩に「ジャンプに投稿してて担当つくまではいったよ」って話したんですよ。その子も漫画を描くみたいやったんで。

前田 それは尊敬されたんじゃないですか。

ふなつ はい、すごく(笑)。その子から「年賀状に女の子を描いてくれ」とリクエストされ、悩んだ挙句、翌年は寅年だったので、虎のコスプレをする女の子を描き上げたら、僕自身がそのキャラクターを気に入っちゃったんですよ。

前田 うまく描けたと?。

ふなつ 何だったんでしょうかね。とにかくこのキャラクターで漫画を描きたいな、動かしてみたいな、と。その時に「自分はやっぱり漫画を描きたいんやな、仕事を変えるなら漫画の道しかない」と思い、再び漫画を書き始めました。

前田 ドラマチックな展開ですね。

ふなつ そうですね。彼女はある意味、恩人ですね。

前田 そのキャラクターの漫画は完成したんですか。

ふなつ 原型からはかなり変わりましたけど。まずキャラの設定は頭の中にあったんですよ。それからこのキャラの良いところを引き出してやろうと。それまでは、ストーリーを考えてからキャラクターを当てはめて描いてたんですが、その時は初めての手法を採ってみたんです。完成後ヤンジャン(週刊ヤングジャンプ)に持ち込みました。

前田 投稿されてたのはずっとジャンプだったんですよね。どうしてヤングジャンプに?

ふなつ 完成した後、いろいろな人に見てもらったんですが、やっぱり「ジャンプ色あるよね」って意見が多かったんですね。でもちょっとジャンプとは違うなと。今にして思えば若かったんですが、当時24歳でして「もう少年誌はいいだろう」って思いもありました。それにエッチな物も描きたかったんです。

前田 確かにジャンプじゃ描けないですね。個人的にはヤンジャンでよかったと思います。私、コミックスのカバー下のファンです(笑)

※コミックスのカバー下:「華麗なる食卓」コミックスのカバーをめくると、高確率で表紙に登場人物のセクシーショットが描かれている。これを楽しみにしているファンも多い。青年誌掲載作品ならではのサービスカット。

ふなつ ありがとうございます(笑)

前田 持ち込みされた結果はいかがでした?

ふなつ それが、そのまま賞に出すという話になって。結果、準入選を頂きました。

前田 準入選というと上から2つ目ですよね!

ふなつ それがね、持ち込んだ時の担当さんはとても微妙な反応やったんですよ。めっちゃ丁寧に読んでくれた後、静かに「大作ですね」って。いけてるんかいけてないんか分からないですよね(笑)。その日は東京観光して、夜行バスで東大阪に帰って。でも3週間後くらいに夜12時に電話かかってきて(笑)

前田 夜12時はちょっと非常識ですよね(笑)

ふなつ すごく興奮しながら「じゅ、準入選です!」って(笑)。僕はなぜか変な自信はあってそんなにびっくりはしなかったんですね。「あ、そうですか。ありがとうございます」って反応やったんですよ。そしたら「準入選っすよ!年に1回出るかでないかですよ!」って。微妙なリアクションした担当さんが一番驚いてたんです(笑)

前田 担当さんが一番予想してなかった(笑)

ふなつ 「華麗~」の連載が始まって約1年経った、とある飲みの席で担当さんに聞いてみたんですよ。「なんであの時微妙なリアクションやったんですか?」って、したら担当さん、渋~い顔しながら。「ん~…好みじゃなかった…!」とバッサリ!!(笑)そりゃあそれが準入選取ったらビックリしますよね!(笑)

前田 ビックリしますね(笑) しかし急展開ですね。ご家族の反応はいかがでしたか?

ふなつ 準入選を知らせる電話を切ると、当たり前ですけど父も母も起きてきて、「なんの電話や?」って聞かれたんで、分かりやすいように賞金で「準入選で50万円もらえる」って言ったら、それから父と飲むことになりました(笑)

前田 祝杯ですね(笑) お父様は漫画は読まれるんですか。

ふなつ 父は僕が買ってきたジャンプを毎回読んでましたね。ただ母は読まないし、やっぱり母親ですから「この50万でこの子の人生が変な方向に行ったらどうしよう」って言ってました。よく考えたらそうなんですよね。賞をもらっただけで後は鳴かず飛ばずの方もいるって聞いていましたし。手放しに喜ぶ父も印象的でしたけど、心配する母の気持ちも何となく分かるような気がしました。親になった今は余計にそう思います。

今回はふなつ先生がデビューするまでについて聞きました。次回はいよいよ「華麗なる食卓」の連載が開始。お話はクライマックスに向かいます。

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