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井山七冠に1mmでも近づくぞ!【series2】「わからない」ことを楽しむ文化。紅白的囲碁観戦のススメ
東大阪出身の棋士、井山裕太七冠(以後井山七冠)に1mmでも近づきたい!と下心満載でお送りする特集記事。
第1回は「井山裕太が好きすぎて同人誌を出した女」こと佐治るみ子さんに、囲碁の世界と井山七冠の偉大さについてうかがいました。予想以上にバズったので、「この企画…イケる!」と踏んだ週刊ひがしおおさか。今回は実際の棋戦を楽しんでみたいと思います。
今回も、動画と記事の2本立てでお届けします。
2月5(月)、7日(水)、8日(木)に「LG杯」という大きな大会の決勝戦が開催されるとのこと。第2局の2月7日(水)に週刊ひがしおおさか事務所で観戦しました。ちなみに決勝戦は3局のうち、先に2局勝った方が勝ち。5日の初戦は井山七冠が破れ、もう一度負けると終了。今日は1勝1敗を賭けた、大事な日です。
大盤解説や囲碁サロンはまだ早いし馴染めてない感が出まくるので、とりあえずは職場で観戦しようぜ、と様子見を兼ねてテレビ観戦。
「対局の中盤から見る人も多いので、開始時刻の9時に集まらなくても大丈夫です。昼過ぎにぼちぼち事務所に行きます。」と佐治さんからの言葉を信じ、11時頃ダラダラ仕事をしていると、LINEが動き出しました。
なんかめちゃくちゃ焦っている。どうやら「早く行かないと終局しちゃうかも」とのことで、予定より1時間半早く到着した佐治さん。
続いて囲碁大好きアナウンサーの遠藤さんも仕事が早く終わり、約束の1時間前に駆けつけてくれました。
ミホロボ:お疲れ様です。一体今、何がどうなっているんですか?
佐治:あのですね、井山七冠がいつものように複雑な手を打っていたんですが…思っていた以上に劣勢なんです。
前田:J:COMで「囲碁・将棋チャンネル」を観よう。
佐治:私は日本棋院の公式アプリ「幽玄の間」で追います。
遠藤:観戦するにもいろいろなツールがあるんですね。
ミホロボ:例によって初心者の私はLG杯が何なのかよくわかっていないのですが、どんな棋戦なんですか?
佐治:正式には「LG杯朝鮮日報棋王戦」といいます。国際棋戦の中で最も格式高いと言われています。元は韓国の国内棋戦だったものが発展し、国際棋戦になりました。
前田:国際棋戦…ラグビーでいうテストマッチみたいなものですね。
佐治:今行っているのは、「第22回LG杯朝鮮日報棋王戦決勝三番勝負」です。中国の、謝爾豪(しゃ・じごう)五段と対局。井山七冠にとっては、張栩(ちょう・う)九段以来13年ぶりとなる日本勢優勝を賭けた戦いです。
ミホロボ:三番勝負…?
遠藤:3局のうち、先に2局勝った方が優勝ってことですね。
前田:第1局(5日)は井山七冠が負けたから、今日負けるとおしまい。
佐治:そうなんです!長年見ていたからわかりますが、第1局での表情!一見無表情に見えますが、あれはめちゃくちゃ悔しいときの顔です。
ミホロボ:いつもながらの井山愛、ありがとうございます。勝てば1勝1敗、第3局で実質優勝決定戦かぁ。
遠藤:しかも今、解説を聞いていると相当劣勢みたいです。これは手に汗握る…。
■「わからない」ことがおもしろい。囲碁とTwitterの親和性
アプリの生中継を見ながら、碁石を置いていく佐治さん。ぶっちゃけまだ面白いかどうかってわからない記者・ミホロボが手持ち無沙汰にテレビ中継の解説を試聴していると…。
ミホロボ:なんか、解説の人が「わからない」「どうなんでしょうね」ってめっちゃ言ってません?解説…なのか?
佐治:はい。局面がこれからどうなるのか、解説の先生もわからないんです(笑)。次こう打ったら相手はこう出るだろう、とか予想は立てますが、実際には全然違う手を打つことも日常茶飯事です。
前田:そういうものなのか。
佐治:局面のことは対局している2人が一番考えているので、どんなに強いプロでも当事者以上のことってわからない。対局中の2人にしか、わからない世界があるんです。
遠藤:なるほど、2人が碁盤を通して対話しているんですね。すごい世界…。
佐治:もう、もう、それってすごく…萌えません?私たち外野は、ああやこうや言いながら見守る。わからないことが楽しいっていうか…。
ミホロボ:「わからないことが楽しい」!いいですね、それ。
佐治:私はプロ棋士のTwitterをいくつかフォローしていて、見解を比較してみることもあります。アマチュアやファンのつぶやきもチェックしてみると、面白いですよ。
ミホロボ:Twitter!ほんまや、実況してる人のツイート検索してみたら、「LG杯最高にわけわからん」「何やってんだろうこの人たちって感じで眺めてる」とか、めっちゃ出てくる(笑)
前田:ぼくも形勢は全然わからないけど、今「劣勢から逆転の模様」ってツイート見つけた!「黒が最後に間違えたっぽい」ってなんとなく解説してる人もいる。(※井山七冠は、この日白で打っています。)
遠藤:あっ、AIで形勢判断をして、ツイートしている方もいらっしゃいますね。いろいろな方が独自の見解をしていて楽しいです。
前田:うん、楽しい。
ミホロボ:なんかこの感じ…紅白っぽい。大晦日に紅白歌合戦を見ながら、Twitterしながら、ダラダラしてる感じや!
佐治:そうそう。ちょっと誤解を招く言い方かもしれませんが、私が今日昼から行くって言ったのも「最初から真剣に見なくてもいい」からなんです。中盤からでも棋譜を見てなんとなくの状況がわかるし、むしろ中盤からの方が面白いことが多い。今日は思いの外前半に劣勢になったので、焦って来ましたが。
前田:あー、なるほど。スポーツと違ってそこまでライブ性が求められないし、だから好きな時間に見られるんですね。
佐治:昔はTwitterや観戦アプリなんてないですし、対局が終わったら郵送で棋譜を送って…という時間がかかる作業をしていたので、ファンに届くのが遅かったんです。棋譜掲載の新聞がめちゃくちゃ売れたのは、そのためですね。
前田:だから新聞社がスポンサーについているのか。
佐治:私みたいに棋士の一挙手一投足が見たい人は中継を見ますが、最終の棋譜だけ見る方も多いですね。
遠藤:ライブ性がそこまで求められない中で、Twitterはみんなでワイワイ言いながら検討していく「お茶の間検討陣」なんですね。
前田:Twitterと囲碁って、親和性が高いよね。移動しなくてもいいし、ネットやテレビを見ながらの「ながら見」で楽しめる。すごい!
遠藤:棋戦の楽しみ方がひとつ増えた気がします。
■同人誌にTwitter。囲碁文化を日常に落とし込むべし
前田:さて、Twitter民が形勢を予想していますが、だいぶ終盤になってきました。何が起こっているのか全然わからないけど、「井山、勝ってる…?」「正確に打てば勝ち」といったツイートが多くなってきました。佐治さん、これは…。
佐治:え…え…どうなんでしょう(笑)中国や韓国の選手って、最後の最後まで諦めないんです。逆に日本の国内棋戦では、負けがほぼ確定したらそのまま投了する傾向があるのですが。
遠藤:美学というんでしょうか。「きれいな棋譜を残したい」という思いや、引き際を心得ている感じがして、それはそれでかっこいいですね。
佐治:ただ、国際棋戦だとそうも言ってられなくて。海外の棋士は必死で食らいついてくるので、最後に甘い手を打ってしまうと、逆転されかねません。井山七冠は世界に照準を合わせ戦っているので、いつも最後まで粘り強く打って、とどめを刺しにいっています。
ミホロボ:泥臭さがかっこいい。今、テレビの解説で「マジック」ってワードがよく出てきていますが、これは?
佐治:「いやマジック」ですね。劣勢だったのに、いつの間にか逆転してるので、マジックと言われています(笑)
遠藤:(笑)。…と言っている間に、Twitterやテレビがざわざわし始めました。どうやら整地に入ったようです。(※対局の終わり方は、どちらかが負けを宣言するか、整地して陣地を数え、地が多かった方が勝ち。)
前田:ズルするやつや!
ミホロボ:ヒカルの碁の最初の方で、三谷くんが整地でズルするやつですね(笑)
佐治:コラ!それは漫画の話ですので(笑)
ミホロボ:で、Twitterでは「井山が勝ち」って言ってる人がいる…どうなの…?
佐治:え…え…。
遠藤:あ!テレビ画面に「井山七冠勝利」って出ました!これはもう、確定ですよね。
佐治:くぁwせdrftgyふじこlp…
前田:絶望的な劣勢から、勝った、勝った!うわ〜、なにこれ…。
ミホロボ:全然わからんけど、とにかくすごいことはわかった!
遠藤:うん、うん、すごい。スゴイです!
佐治:ううう…。井山先生〜〜〜。ぐす。
遠藤:いや〜、なんていうか…そう。全然わからないですが、解説陣やTwitterでギャラリーの熱が伝わってくるから、わかりますよね。どれだけすごいことをしたのかが。
佐治:うう…そうなんです…。一局目の敗戦から立て直してきた、その精神力がすごい。単に強いんじゃなくて、誰よりも勝ちたい情熱が強い。それが、井山七冠なんです。
前田:ラグビーにしてもそうなんですが、ファンって競技そのものも楽しむけど、「競技の文化」自体を楽しんでいるよね。それがすごく伝わってきた。
ミホロボ:なんか知らんけど、早明戦の入場でみんなめっちゃ涙してるとかね(笑)。囲碁は、わからないなりに「わからないということ」をみんなで楽しんでいる。いい文化ですね。
佐治:本当にそうで、囲碁はこれからもっと「観る人」を増やして行かないといけないんですよ。
前田:お、佐治さん復活。
佐治:囲碁ってけっこう「サザエさん」や「ドラえもん」といったアニメにも登場しているんですが、それって実は重要なことなんです。
ミホロボ:あー、たしかに波平とマスオさんが打ってますね。
佐治:日常に溶け込んでるということが大切ですね。今は打つ人=観る人ですが、観るだけの人が増えるには、生活の中になんとなくいつも囲碁がある、という状態にすることが重要なんです。そうすれば、日本の囲碁はもっと発展していくのではないかと思います。
遠藤:佐治さんが同人誌を制作されたのも、「囲碁」を「同人誌」という日常に当てはめていますもんね。
ミホロボ:私なら、Twitterという日常に囲碁を落とし込む。その人なりの「いつものこと」につなげていくことが、次の世代の囲碁になっていく。う〜ん、おもしろい。
前田:今日、負けたらこの企画どうしようって思ってたけど(笑)、囲碁の文化を体感できてすごく楽しかった。もう、対局観戦にTwitterは手放せません!
次の日の最終局では残念ながら負けてしまいましたが、準優勝となった井山七段。ドラマティックなLG杯決勝戦で大満足でしたが、我々はもちろん次回も1mmでも井山七冠に近づくために、あの手この手で囲碁の世界を楽しんでいきます。待て、次回!
LG杯観戦のYoutube動画はこちらから
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