今や日本が世界に誇るカルチャーの一つになった漫画。コンビニでも雑誌コーナーの大半を漫画が占め、通勤、通学時でも漫画雑誌を広げている光景は当たり前のようになっている。
今回の「東大阪の顔」は人気青年漫画雑誌週刊ヤングジャンプにて、「華麗なる食卓」を連載中で東大阪市出身(埼玉県所沢市在住)でもある、ふなつ一輝先生に連載開始時の裏話などを伺った。5回シリーズの4回目。
お忙しい中お時間をいただいたふなつ一輝先生
週刊ひがしおおさか前田(以下前田) 先生の代表作と言うとやはり「華麗なる食卓」になるかと思います。2001年連載開始ですから、今年で連載10年。コミックスも10月に42巻が発売されました。失礼ながら、連載開始時にはカレーをテーマにした漫画がこんなに長く続くとは考えていませんでした。どう言った経緯で始められたんでしょうか。
華麗なる食卓 ヤングジャンプで10年は並大抵のことではない 撮影:前田
ふなつ一輝(以下ふなつ) 上京してすぐ、「押忍!!空手部」の高橋幸二先生のアシスタントをしていました。読み切りを数本書いた頃、担当編集さんからカレー漫画を描かないかって言われたんです。当時の編集部でカレー好きの方々がカレーを食べている時に「そう言えばカレー漫画ってないよね。ふなつ君はどうなの?」と言った流れだったと聞いてます。
前田 そ、そうなんですか?!僕はてっきり分析や狙いがあって開始されたんだと思ってました。お聞きしていると、勢いで話が舞い込んだように思えます。
ふなつ 正直僕も驚きました。料理漫画自体まともに読んだことありませんでした。いろんなジャンルの漫画が描きたいとは思っていましたが、唯一といっていいくらいイメージができないジャンルが料理だったんですよね。
前田 それは、相当悩まれたんではないでしょうか。
ふなつ そうですね…。ただ、いきなり連載というわけではなく、まず3回分の読み切りとして描いたんです。僕、料理をほとんどしなかったので、その時に一からいろいろ勉強しました。カレーがなぜあんな色をしているのかも知りませんでした。描くために調べていると意外と奥が深いことが分かってきたんです。
前田 その読み切りの評判が良かったので連載に、という流れでしょうか。
ふなつ そうですね。出来てすぐに「これで連載用のネーム描いて」って言われました。
前田 それでも、今までに無い試みですよね。不安はありませんでしたか。
ふなつ 始める前にいろんな人の話を聞いたんですが、皆さん続かないって言うんですよ(笑)。カレーって言うとインド風、和風、それ以上思いつきませんからね。でも、勉強もしていたので「ネタはあるぞ」って思ってまして。じゃ僕がやるからには自分がなじめない料理漫画の要素を消して、料理漫画が好きじゃない人にも読んでもらえるものにしようと考えたんです。だって、カレーって誰に聞いても家庭の味やって言うんですよね。誰にでも作れる料理でほとんどの人に愛されるからカレーって素晴らしいんですよ。
前田 せ、先生。その言葉、作中でマキトが言ってますよね!!
ふなつ だから主人公は助平だけど料理の腕はピカイチで、人を探す旅をしていて、ヒロインがいて、というカレーにまつわる人間ドラマを描こうと思って始めました。
前田 確かに華麗なる食卓は、一見料理漫画らしくない要素がたくさん入っています。けんかもあるし、展開もドラマチックですし、エッチなシーンもあるし(笑)。特にヒロインの結維ちゃんが可愛いですよね。
ふなつ ありがとうございます(笑)。おっしゃるように料理漫画らしくない要素をたくさん入れていますから、料理だけはしっかりしないと、というのがありまして、作中に出てくるカレーはすべて作ることが可能なものばかりです。監修の森枝卓士先生のレシピも載せています。
前田 レシピが別枠で書かれているのはとてもわかりやすいです。漫画も読みづらくならないです。この手法は私もなにか作るときには参考にしていまして、説明書で解説が必要な部分は欄外や別ページで書くといった具合にです。
ふなつ おー、思わぬところで活用いただいてるんですね。ありがとうございます。
前田 主人公のマキトが大阪弁なのは先生のご出身が大阪だからですか?
ふなつ そうです!漫画の大阪弁って微妙に違うでしょ?!だから絶対にこれでいくぞって。始めの頃は担当編集者に「ここ意味分からないんですけど」って指摘されたりもしたんですが、「これでいいです。こう言うから」って突き返したりして(笑)
前田 ものすごく自然ですもんね。私も連載開始時に「お、完璧やん」とか偉そうに思ってました。
ふなつ ありがとうございます。 でも大阪弁も地域で全然違いますから、たまに「違う」って言われることもありますよ。
前田 でも漫画界の中ではちゃんとした方だと思います。東大阪弁かもしれませんが(笑)
ふなつ そうそう、連載開始してすぐに「先生の大阪弁は完璧ですね!」ってお便りいただいたんですけど、喜んでその方の住所を見たら「菱江」だったんですよね(笑)
菱江の交差点 東大阪市中部にあり交差点は渋滞の発生地点でもある。
2000年ほど前まではこの辺りまで海が来ており、周囲には「江」と付く地名が多い。
前田 ちか(笑)
ふなつ そりゃね!って感じですよね(笑)
前田 そんな数々のこだわりが、10年間の連載を支えているんですね。
ふなつ 始まる時はコミックス2巻(6カ月)が目標だったんですが、それが4巻になり8巻になって…ですね。
今回はふなつ先生がデビューするまでについて聞きました。次回は最終回。華麗なる食卓以外の作品や、漫画以外のお仕事についてうかがいます。
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