5月17日、大阪の行末を占う特別区設置の是非を問う住民投票が行われました。結果はみなさんの御存知のとおり、僅差で都構想が否決されました。
その際に顕著になったのが、20代の投票率の低さ。これほど話題になった選挙で3割程度しか投票していないってどういうこっちゃ。よーわからへんで。ということで、週刊ひがしおおさかが総力を上げて、やっと見つけた20代4人に「選挙」についてお話をうかがいました。
若者はどれくらい選挙に行かないのか
ーみなさん今日はありがとうございます。こんなに若い人が集まるなんて感激です。今回はスタッフの野口(25)さんを中心に、ほぼ同い年の若者に集まってもらいました。まず山本さんは、選挙に行ったことないんですよね。
山本 そうです。関心がないというか、興味がないです。どうせ誰が何をしても同じだと思っています。
ーなるほど。川田さんは今回唯一の男性です。都構想の住民投票には行かれたんですね。
川田 はい。大阪市民なので。今回は行ってきました。
ー 今回は。ということは、行かないこともある。
川田 半分行ってるか行ってないか、くらいですかね。
ー では、5割弱ですね。行く行かないの基準はありますか。
川田 テレビでよくやる参院選とか衆院選とか、大きな選挙は行きます。覚えているので。でも市議選とかは…
ー もしかして、市議選童貞ですか?
川田 そうですね(笑)
ーまあ、情報少ないですもんね。野口さんは、東大阪市民。今までの選挙は全部行ってるんですよね。
野口 このあいだの選挙(統一地方選)は仕事の締め切りがタイトすぎて行けなかったんですけど(笑)
ー ヤブヘビでしたね(笑)ここでみなさんの選挙打率、今まで投票行動をした確率を整理します。川田さんは5割弱。野口はほぼ10割。山本さんは0割でいいですか?
山本 はい。1回も行ったことがないです。
ー 行かない理由ってありますか?
山本 興味が持てないですよね。漢字が読めないとかのしょーもないことでもめているイメージしかないですし。
ー 確かにあれを見ちゃうと、かっこ悪く見えますよね。日夏さんは?
日夏 うーん。私は2回しか行ったことがないですね。大学時代は住民票が実家で。投票するようになったのは、社会人になって大阪市でひとり暮らしをするようになってからです。
ー ということは、だいたい3〜4割かな。ありがとうございます。気になるのは2人が「行く人なのに行く回数が少ない」ということです。ちょっと掘り下げていきましょう。
投票率3割が持つ意味
ー よくわからないのが「行かない」わけではないのに「行く習慣がない」ことです。私は生涯選挙打率10割で、家族もほぼそう。同世代の友人も、なるべく行くようにしている人か、絶対行かない人か。ようは、野口さんと山本さんしか私の周りにはいません。
日夏 気がついたら終わってたって時もあります。
川田 出かけてる時に「あ、今日は選挙か。」って気がついて。でも今から家に帰ってっていうのもアレなんで行かなかったとかですかね。
日夏 今の彼氏に「なんで行かないの?」と怪訝そうに聞かれたことがあります。え、そんなものなの?って、ちょっとビックリした。
ー それでも「絶対行かない!」ってわけじゃないんですね。
日夏 行かなきゃいけないって意識はあるんですけど。毎回行っている人を見ると「えらいなぁ」って思います。
野口 でも「えらいなぁ」にはポジティブな意味だけじゃなく、ネガティブな意味もあるよね。
川田 うん。「熱心やなぁ…」ってね。
ー あー、イタイ人に思えるんですね。となると、期日前投票は…
一同 ないですね。
ー 即答ですね(笑)
野口 めんどくさい…。
川田 どんな制度かも知らないですし、調べるのもめんどう。
日夏 正直、そこまでするのは。
野口 普通に選挙行くより難しいですよね。
ー ほぼ10割の野口さんも使ったがことない。期日前使わずに10割は逆にすごいと思いますよ(笑)
川田 友達とも選挙の話とかしませんし。
野口 どっちかというと「どの党がどうとか、わかる?」「わからん!」みたいな会話で終わるよね。
川田 合コンでそんな話するやつは、ないですね(笑)
ー それはおっちゃんたちの世代でも同じです(笑)重要だとは思うけど、イタイ人にはなりたくないし、そんなに優先順位が高くないので何かあると後回しにしてしまう。結果10割と0割の間に大きな「たまに行く層」がいて、全体として若者の投票率が3割程度になっている。ということでしょうか。
若者を選挙から遠ざけているもの
ー 期日前投票、いいですよ。僕のまわりの「ほぼ10割な人」はみんな活用してます。当日より絶対に手軽ですし。
川田 でも、どこに何を持って行ったらいいのかもわからないです。
ー 手ぶらで市役所へ。名前と免許証で大丈夫です。ってネットにも載ってるしスマホで検索したらわかることなのに、知らないんだっていう衝撃が。
野口 検索するほど自分にとって重要じゃないってことかと。
川田 行けなきゃ、それでいいっていうか。
ー 優先順位がかなり下の方ってことですよね。それはけして悪いことではないです。政治なんか、優先順位が低い方がいいですから。
日夏 あ、ネット投票できたらもっと投票するんじゃないかな。とは思います。
川田 出かける前の30分で投票ができるなら、自分も5割ってことはなくなるかも。
山本 私はそれでも投票しないですけど(笑)
ー 優先順位は低い。でも投票したくないわけじゃない。という人が多いなら、ネット投票は投票率アップにかなり貢献しそうですね。コンビニで投票できるとどうですか?
野口 いく・・・かな?ATMのついでにとかなら。
ー なるほど。今の若者は、一昔前に比べると「忙しい」とか「関心がない」とか言われますが、そうではなく「多様な生き方」をしているんですね。なので単一的な「この日にここへ来い」というのでは、行動を起こしにくい。
野口 私、本は栗林書房で買いますが、忙しい人はAmazonで買う人も多いですもんね。
ー 私は電子書籍です。音楽はもっと多様で、CD、iTunes、Youtube、クラウドサービス。こんなに行動の選択肢があって、しかも自分が移動しなくてもいい。いまさら「ネット通販禁止令」が出ても、みんなが書店に買いに行くことは絶対にありません。世の中が自分の生活にあわせて多様化されているのに、選挙だけ「この日にここへ」では、足が遠のくのも仕方がない気がします。
”今回”の選挙は何が違うのか
ー では、大阪市の住民投票、日夏さん行きましたか?
日夏 はい。変わるかもしれないと思ったから。
川田 ホンマそれです。若い人が市長になって、大阪を変えるっていうでかいことをしようとしていて。
ー ということは積極的に投票に行った。
川田 反対か賛成か、めっちゃ考えて行きましたね。
ー 友達や職場の方はどうでしたか。
川田 行ってましたね。
日夏 職場に同世代の人がいないんでよくわかりませんが、30代の方は行ってました。実は私、もっと反対が勝つと思っていたので、結果にびっくりしました。公約をみて…とかはしてませんが、自分の一票って変わるんやって思いました。
野口 私も以前、選挙に絡んだ仕事をしました。それも本当に僅差で。「私にここの選挙権があって、知り合いに声をかけてたら勝ったかも」と思うと、次からもちゃんと選挙に参加しようって思いました。
ー ここで参加意識が生まれた。ということは、今まで参加意識がなく投票に行っていたんですね。
日夏 えーと、参加意識ってどういうことですか?
ー 投票率を上げなきゃとか、民主主義を成立させるためにとか。参加することに意義があるってことですね。
野口 それは…ないですね(笑)
川田 ないですね。じゃ、いつも白票ですか?
ー かつてはそんな、若さあふれることもしましたが、今は消去法で。たぶんこいつが一番マシだろうと思って投票しています。
日夏 そう。そうですよね。私もでした。
ー 民主主義は毎回究極の選択で、ベストはいないけどベターの選択をする。特定の団体が組織票でリーダーを決めてしまうのは、民主主義じゃないですよ。さまざまな立場の人が、参加して選んでこそのリーダーです。
野口 民主主義のためとか、なにかのためとかはないかなぁ。
日夏 私たちにとって、民主主義ってもとからあるものです。良さはよくわからないけど、独裁は嫌だし。ってくらいですかね。
ー 私にとっても、もとからあるもんですけどね(笑)たぶん、支持政党がなく投票に行っているおっちゃんは基本的に私と同じように、民主主義への参加意識で行動しています。人類は民主主義以上に効率的な仕組みをまだ見つけていないので、民主主義だけはやっとかなきゃなって。
社会観の差 なぜ投票するのか
野口 確かに、40代以上の方と話していると自分たちと社会観が違うとは思います。私の昔の同級生で起業した人が、途中でやめて某大手IT企業に就職しました。でもFacebookで充実の毎日をアップしてるんですよ。「新しい道が開けた!」って。
ー なんか恥ずかしいと思っちゃいますね。
野口 でしょ。でもその人もたぶん私も「自分が楽しいからそれでいい」んですよね。
ー あー、なるほど。
野口 40代の社長さんたちとお話していると、使命感というか社会をよくするためにお仕事をされていると感じます。私にはない感覚です。
山本 自分が楽しいのが一番で、次に家族と友達。自分でも世界が狭いなと思いますけど、そういう人が昔より増えている気はします。
ー 確かに20代の起業家って、既得権や老害と衝突しないですね(笑)自分たちの楽しいことをやるから、衝突することでマイナスになるなら突っ込んでいかないですし。
野口 逆になぜ、そんなに社会とか民主主義を大切に思うんですか。
ー 自分がなるべく心地よく生きるために。私は単に、休日に好きな紅茶を飲みながら好きな歴史書を読めたらそれでいいんです。
野口 確かに「好きな紅茶を飲みながら好きな本を読む」って民主主義じゃないとできないです。
ー 今のは「銀河英雄伝説」という小説の主人公ヤンのセリフなんですけどね。強大な君主制国家の優秀な皇帝ラインハルトに、腐敗した民主制国家の元帥ヤン・ウェンリーが対抗するの。ヤンは、部下からは国家のためにクーデターを起こして独裁しろと言われます。でも、民主主義を守るためにあえて元帥にとどまり、政治に関わらないスタンスを貫く。
(この間銀河英雄伝説の解説に入ったので略)
野口 …応援するならヤンですね(笑)
ー 私はこの小説を読んで民主主義の重要さを学んだのかもと思い、熱弁しちゃいました。みなさんは学校で「選挙に行く意味」はどう教えられるんですか?
日夏 「せっかくある権利なんだから使いましょう」って感じです。
野口 あまり、民主主義がどうこうとは言われないかも。
日夏 だから、この小説みたいに民主主義の重要さがわかるドラマとかあればいいなって思います。学校で習うより、ずっと心に残りますよ。
ー 確かに日本にはそういう映画もドラマもないですね。登場する英雄は、ラインハルトや橋下徹のような、私たちのやるべきことを決めてくれる決断力のある頼れる独裁者タイプばかりです。
今日はみなさんありがとうございました。
まとめ
今回お話を聞いた若者4人は、いずれも自分をしっかり持っていて、臆することなく発言できる優秀な人ばかりでした。私の20代の頃と比較すると、恥ずかしいです。不戦敗です。
同時に感じたのは、若者にとって投票はコストに見合う行為ではなくなっているということです。
全て、おっちゃん達が良い社会にしようとした結果によるものです。
投票に係るコストを下げて、投票によって得られるものを大きくする、もしくは大きく感じられるようにすることが、投票率のアップには必要ではないでしょうか。
さいごに
投票率が低い20代に話を聞くと、逆に投票率が高い60代以上に話を聞きたくなりますね。
次は、そんな座談会を。皆さんお付き合いいただきありがとうございました。
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