前編では、東大阪市花園ラグビー場のグラウンドキーパーである東扇産業産業株式会社の扇誠課長に花園に飛来するハトについてインタビューしました。
後編では花園ラグビー場第1グラウンド(以下、花園第1)のラグビーとサッカーの両立について、インタビューしていきます。
これまではラグビー専用スタジアムとしてラグビーのみ使用してきた花園第1。
今年の春からは、今季よりJ3リーグに参入するFC大阪のホームグラウンドとしての使用も決定しています。ホームゲームは年間19試合あり、会場が発表されている17試合が花園第1。
花園近鉄ライナーズは8試合で使用します。特に3月から4月はライナーズとFC大阪の試合が交互に入っていて、芝の状態が心配されます。
ーラグビーとサッカーの両方をメインに使うグラウンドは珍しいですよね。
扇 我々が任せていただいているグラウンドでは、花園第1が初めてです。これまではサッカーがメインで、たまにラグビーの試合をするといったグラウンドの整備はしたことがあったんです。全国的に見ても珍しいと思います。
ー他に管理されているグラウンドは?
扇 大阪でいえば枚方市立陸上競技場(たまゆら陸上競技場)や、FC大阪が使用している服部緑地陸上競技場です。野球場も管理しています。
ー服部緑地はかなり改修が大変だったと聞いたような。
扇 2017年頃でした。FC大阪がホームグラウンドとして使用し始める前に、グラウンドキーパーとして改修に携わりました。メリケントキンソウ(※1)が大量に生えていて。繁殖力がすごいので、一箇所生えると一気にグラウンド全体に広がるんです。この除去がなかなか大変でした。
※1)メリケントキンソウ・・・南アメリカ原産の外来生物。4~5月頃に開花し、5~6月頃に実をつける。実には2mmほどのトゲがあり、このトゲが肌に刺さりケガをするおそれがある。
ーかなりきれいなグラウンドになりましたよね。
扇 ありがとうございます。我々が関わったのはグラウンドだけですが、施設全体も改修されてすごく明るいスタジアムになりました。
ーそういえば、FC大阪の試合にはホーム・アウェイ関係なく、ほとんどの試合に行かれてますよね。
扇 スタッフの方と知り合いというのもありますが、やはりグラウンドの管理をする上で、そのスポーツやチームのことを知っていかないと、と。アウェイでもほとんどの試合に行っています。おかげですっかりファンになりました(笑)。
ー青森で見かけたときはびっくりしました。
扇 行ける試合はすべて行っています。ラグビーは今、勉強している段階です。高校ラグビーや大学ラグビーはもちろん、その他にも中継などで勉強しています。ライナーズの試合を花園で見ているとやはり感じるものがあるので、これからも積極的に見に行きます。
ー芝の話に戻しますが、ラグビーとサッカーでは芝の長さがが違います。管理はかなり大変なのでは?
扇 ラグビーはだいたい30mm、サッカーは20〜23mmというのが多いです。サッカーのほうが短いので、サッカーの翌週にラグビーの試合が入っているとなかなか大変ですね。
ー約10mmも違うんですね。
扇 今までの花園第1はラグビーだけだったので、擦り切れ(芝がめくれたり剥がれてしまうこと)に強い芝で良かったんです。ただ、これからはサッカーも使用していきます。今までと同じ芝だと抵抗などでボールが転がりにくかったり、スパイクに引っかかったりするんです。それもあって今年からは芝をレグゼット(※2)という品種に変えています。こちらは抵抗が以前より少なく、擦り切れには強いんです。
※2)秩父宮ラグビー場でも同じ品種を使用しています。
ーそれだとラグビーに影響は出ないのでしょうか?
扇 これまでの花園第1はラグビーに特化している芝で、他の競技には適していませんでした。ラグビーに影響の出ない範囲でバランスを調整をしている段階です。ラグビーは踏ん張る場面が多いので、スクラムなどでスパイクがしっかり芝に掛かるような床土にしています。
ー今年の3月〜4月はラグビーとサッカーが交互に入っている週もあります。1週間で伸びるものなのでしょうか?
扇 季節にもよりますが、1週間あれば10mm〜15mmは伸びます。特に今使用している冬芝は3月から4月が生育のピーク。交互に使っても問題はないとみています。
ーその言葉が聞けて安心しました。
扇 特に最近の日本のラグビーはボールを蹴って転がしたり、走ったりするのが多くなってきているので、昔に比べるとラグビーの芝も短くなってきているんです。サッカーの試合の翌週にラグビーの試合をするというのも可能です。
ーラグビーの試合後は芝へのダメージがかなりありそうですが、どのように維持を?
扇 弊社は整備マシンも取り扱っているので、独自の機械とノウハウを持っています。芝が掘れて穴が空いてしまった箇所も自信を持って修復できます。
ーそれは心強い。
扇 他のグラウンドであれば1回種を蒔いてしまえばある程度は放置でも問題ないのですが、花園第1は稼働率が高いので常に種を蒔いているんです。
ーもしかして、それがハトが飛来する要因にも?
扇 それもあると思います。種を蒔くのは主に試合の前後。試合の前では、芝が擦り切れそうな箇所や練習で傷んでしまった箇所に蒔いておくんです。やはりハーフウェイライン付近や22mラインの内側が多いですね。
ーたしかにハトが集まっているのもハーフウェイラインや22mラインの内側辺り…。試合で傷む前に先手を打っておく、ということですね。
扇 その通りです。芝が育つには1週間くらい期間を要するので、試合後に蒔くのでは遅い。特に今の時期は毎週のように試合があるので、次の試合のために先に蒔いておくんです。もちろん試合で傷んだ箇所には試合後にさらに種を蒔いています。
ー花園第1の芝が常にきれいな要因はそれだったんですね。
扇 花園といえばやはり緑の芝が大事ですから、それを維持できるようにこれからも研究していきます。
ーこれまで夏の間はそれほど稼働が高くなかったですが、今年はほぼ1年中稼働します。そこは問題ありませんか?
扇 今までだと使用していない期間に養生期間を設けられたんですが、今年は少ししか取れません。
ー昨年は夏の間にイベントなども多く、一般の方が芝に入れる機会も多かったですよね。
扇 これまでの花園のグラウンドは「聖地」として、選手やスタッフ以外は踏み入ることができなかったと聞いています。もちろんそれも大切なことですが、イベントを通じて地域の方やファンの方にも聖地を楽しんでもらいたいんです。
ー実は僕も花園第1の芝に入れてめちゃくちゃよろこんでます。でも、やはり芝の状態を気にしちゃいます…。
扇 芝の状態をどう維持していくかは、我々の腕が試されるところだと思っています。
ーおぉ、それはこちらも楽しみになってきました。ハトの話だけでなく、芝のことまで教えていただきありがとうございました。
扇 こちらこそ、ありがとうございました。
扇さんに話を聞いたところ、花園第1でのラグビーとサッカーの両立は可能とのことでした。良かった!
ライナーズの次の花園での試合は3月5日(日)。三菱重工相模原ダイナボアーズと対戦します。
FC大阪はホーム開幕戦。3月18日(土)に昨季までJ2に所属していた、いわてグルージャ盛岡と対戦します。
花園ラグビー場の新たな挑戦を僕たちも見守っていきましょう。
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