南半球のラグビー強国のクラブチームで構成される、世界最高峰の国際ラグビーリーグ・スーパーラグビー。2016年から日本もサンウルブズを結成しここに参戦!歴史の転換点に、週刊ひがしおおさかも全力でレポートすべく、東京・秩父宮ラグビー場に乗り込んできました。
昨年のワールドカップから火がついた、ラグビーブームはまだ続いているのか。
事前に完売とアナウンスされるも、いつもどおりスタンドはガラガラなんじゃないか。
そんな不安を抱えながら取材に向かったのですが、試合開始の1時間以上も前から、大勢の観客が詰めかけます。
最寄駅である外苑駅から押し寄せる、人、人、人。それも、時間が経つごとに波は勢いを増していきます。
そして、キックオフ直前にはスタンドには隙間なく人が。観客数19814人。動員なし、チーム招待なし、全ての人が観たくて仕方がなかったと言いたげな笑顔で、キックオフを待っています。
炎の音の演出とともに、いよいよ選手が入場すると、会場のボルテージは最高潮。沸き起こった大歓声は他の音を全てかき消し、秩父宮ラグビー場が日本最高のスタジアムへと変化します。
これだけで、スーパーラグビーでの船出は成功したようなものですが、参入初戦のサンウルブズが勝利すれば大成功となるのです。
サンウルブズは南から北へ。ライオンズのキックオフで試合が開始されると、歓声はサンウルブズを後押しする声援に変わります。
しかし、すぐに観衆はスーパーラグビーの厳しさを見せつけられます。自陣で組まれたファーストスクラムで、ライオンズにまっすぐ押し込まれると、声援は悲鳴へと変わります。わかりやすすぎる完敗。
こうなると、ライオンズはリズムよくアタックし、サンウルブズはとにかく我慢してディフェンス。相手のペースにさせまいと、懸命に低いタックルを突き刺します。そして、ライオンズがラックを形成すると、しつこく絡んでターンオーバー。
この日初めてみたサンウルブズのファインプレーに、早くも観客席は総立ち。そこから続く連続攻撃の背中を押します。
先にスコアしたのはサンウルブズ。6分、相手のオフサイドから得たPGを、10ピシがしっかり決めて3-0とします。
ライオンズは10ヤンチースのキックが不調。何度かあったPGを続けて外し、なかなかスコアできません。
キックがダメなら、トライをと言わんばかりにねじ伏せてきたのは15分。PGを狙える位置から、10ヤンチースはタッチを選択し5mラインアウト。そのままモールを押し込んで、トライ。スーパーラグビー初の被トライを喫しますが、ここでもヤンチースのコンバージョンは外れ3-5。
このトライで目覚めたのか、サンウルブズはアタックのテンポがよくなります。これぞスーパーラグビーと言わんばかりの、パスの速さ。テンポの良さ。相手の隙をついたプレーが随所で見られるようになります。
しかし、攻めてからオフサイド、オブストラクションなどあと少しのところで、ペナルティーを取られます。もちろん、微妙な判定にはスタンドから激しいブーイング。
そんなギリギリのつばぜり合いの中、33分ライオンズは10ヤンチースの戻しパスにきっちり反応した11スコーサンがディフェンスラインを突破して、トライ。ここは10ヤンチースがコンバージョンを決めて、3-12。対するサンウルブズは、前半終了間際に10ピシがPGを決めて6-12とし、折り返します。
点数の行方はともかく、ハイレベルなラグビーに酔いしれた40分間。スタンドでは「すごい」「これがスーパーラグビーか!」といった驚きの声も多く聞かれます。
しかし、後半開始直後の41分、ライオンズは10m付近でゲインすると、オフロードパスを6クリエルに通してそのままトライ。コンバージョンも成功し、6-19とあっさり決めてきます。
その後もライオンズがサンウルブズ陣内深くでプレーする時間が続きます。
46分、自陣残り7m付近でサンウルブズがペナルティーを犯すと、ライオンズはスクラムを選択。前半からスクラムで苦労するサンウルブズは、ここでも2度のペナルティーを取られ、3度目の組み直しへ。明らかにペナルティートライを狙うライオンズ。ここで、スタンドからサンウルブズのスクラムを後ろから押すように、大声援が起こります。
サンウルブズはこれに応えて、スクラムを押し返してターンオーバー。そして、歓喜の大歓声。この後、サンウルブズはスクラムで押し負けなくなります。
待ち望んでいた、この日最高の瞬間は58分。サンウルブズは敵陣10m付近からFWが縦に出てゲインすると、ゴールライン付近で連続攻撃。そして、キャプテン2堀江がトライ!やった!記念すべきサンウルブズの初トライに、選手はもちろん秩父宮ラグビー場へ詰めかけた全ての人が歓喜の声をあげます。
10ピシのコンバージョンも決まって、13-19。再びライオンズを射程圏に入れます。
ところが65分、10ピシがラックから抜け出したかに見えたプレーに、レフリーはペナルティーを突きつけます。さらに異議を唱える10ピシにはイエローカードが。これでサンウルブズは大黒柱を10分間欠いてしまいます。
66分、本来なら10ピシがいてもおかしくない場所をライオンズに続けざまに抜かれてトライを奪われます。13-26。
その後はなんとか耐え抜くも、それが精一杯。試合終了を知らせるホーンの後に、インゴールまで攻め込まれましたが、トライセーブしたところで試合終了の笛がなりました。
13-26。
ハメットヘッドコーチが「この短期間でここまでよくやれた」というように、予想以上の大善戦。スピードは遜色なく、スキルも通用し、コミュニケーションも悪くない。もちろん勝てなかったのは悔しいですが、全ての観客が、両チームの選手たちに惜しみない拍手を送っていました。このパフォーマンス、この熱気を保っていけば、必ずサンウルブズのチャレンジは成功します。
ただ、ライオンズサイドからは「よくはわからないが」としながらも「サンウルブズは良いチームだが選手の層が心配。スーパーラグビーはタフなリーグだから」と茨の道を予見するようなコメントも聞かれます。
ついに始まった、日本ラグビーの新たな歴史。サンウルブズの挑戦。スーパーラグビーの新しい時代。
ラグビー人気を文化に変える。選手、関係者、ファンがスクラムを組み、絶対に成功させなければならない航海の船出は、新たなる発見と希望に満ちていました。
スーパーラグビー サンウルブズ日本での試合日程
3/19 13:15K.O.
4/23 14:15K.O.
5/7 14:15K.O.
7/2 14:15K.O.
※すべて東京・秩父宮ラグビー場
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