中央環状線沿いを南へ、近畿自動車道・東大阪南インター目指していくと、見えてくるのは「紀州ファスナー」の看板。
服のチャックでも作ってるのかな?…と横目にしながらインターへ吸い込まれていく人は多いはず。
いいえ、違うんです。「紀州ファスナー」は、ねじの仲間であるナットを取り扱う企業。これは紹介せねば!ということで、ニッチなねじメーカー情報をコレクションしてお伝えする「ねじコレ」第3回スタートです。
■社名はなぜ「ファスナー」?
迎えてくれたのは2代目社長の中江良一さん。「衣類のファスナーと間違える方もいらっしゃいますが、『ファスナー』にはfasten=締める、つなぐ、という意味があります」
産業用のナットを中心に、「締結」部品を製造販売するのが「紀州ファスナー」なのです。
創業は1957年(昭和32年)。和歌山出身の中江社長のお父さんが、切削ナットメーカー「紀州ネジ製作所」として今里で始めました。
「父はもともとナット工場に勤めていたこともあり、『これからはねじの時代や!』と思い立ち、立ち上げたと聞きました。」と中江社長。
衣摺(きずり)への移転を経て、1980年(昭和55年)若江南町に本社を移します。和歌山に工場を置き、東大阪と和歌山の企業として
「実は本社の4階に住んでいたこともあるんです。」って…ええ!?
パッと見たところ、ものすごく「会社感」がある建物。住居には見えませんが、中江社長はここでナットとともに寝て、起きてを繰り返していたのです。
本社は若江岩田に置き、工場は和歌山県に。2府県をつなぐ高速道路が目の前にあるって、めちゃくちゃいい立地ですが…。
「本社がここに移転した時は、畑や田んぼばかりでしたけどね。万博景気の頃に中央環状線ができ、高速道路も走り、いつの間にか好立地になっていました(笑)」
う~ん、歴史を重ねてきた企業であるからこその返答です。
■アメリカでキュッと締まったねじへの気持ち
現在は若江南町に営業・総務部門の本社、和歌山・御坊(ごぼう)市に製造部門の「紀州ファスナー工業株式会社」の2社に分け、製造から販売までを一貫して行っている「紀州ファスナー」。ねじの素材となる伸線から最終工程のメッキ加工まですべてを自社で作っています。
製造設備よし、立地よし。言うことなしの現在ですが、「私自身、昔は父の仕事に興味がなかったんです。なんでナットやってるんやろ?って思ってました。」と中江社長。そんな社長をナット一筋にしたのが、アメリカでの「ねじ修行」でした。
「同志社大学在学時、アメリカへ留学したんですが、その時の感動が忘れられなくて。もう一度行きたいと思いながら働きに出ていたんです。で、鉄鋼メーカーに勤めていた時、当時のお客さんの勧めで渡米できることになりました。その方がねじ屋さんだったんです。」
アメリカで品質管理や営業について学んだ中江社長は、ねじを仕事にすることへの手応えを感じます。
その縁から、帰国後自社へ入社すると、アメリカとの貿易が急増。当時は円高で、アメリカのねじ市場が日本製から台湾などアジアへシフトされる中、異例の出来事でした。
アメリカ帰りの中江社長の経験が、さらに企業の成長に勢いをつけたのです。
■「我が社の1本」はコレ!
それからは社長自身がナットと締結したかのように、本社の上に住んでみたり、製造環境を整えたりと、ナット一筋。そんな勢いと締結精神あふれる「我が社の1本」は「スリーロックナット」。15年ほど前から製造・販売を開始し、自動車や工作機械に使用されています。
ねじには棒状の「雄ねじ(ボルトなど)」と穴が空いた「雌ねじ」つまりナットがあります。
「スリーロックナット」はまさに逆転の発想。わざとナットに凹状のへこみを作って「外したい時以外は緩まない」脅威の製品力を実現したのです。使い手の声を代弁したかのような製品です。
■新工場を設立し、緩みない歩みを続ける
現在、新工場を御坊市に建設し、ますますパワーアップ中の「紀州ファスナー」。「高品質で低コスト」に磨きをかけるため、広い場所を使った自動設備を投入予定です。
「よそ見をせずに、ねじのことだけを考えてきたから今までやってこれたと思います。足元と外をバランスよく見ながら、一歩一歩確実に歩いて行くことが大事ですね。」
材料の伸線から行われる自社製造に、お客さんのニーズに素早く応える先見力。すべてはねじのために。
「紀州ファスナー」は、緩みない歩みで前進する、ナット一筋のメーカーでした。
■紀州ファスナー株式会社
住所:東大阪市若江南町5-3-53(本社)
TEL:06-6723-8800
■紀州ファスナー工業株式会社
本社・御坊工場: 和歌山県御坊市塩屋町北塩屋521-1
TEL:0738-22-3005
印南工場:和歌山県日高郡印南町古井52-1
TEL:0738-45-0131
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