東大阪のねじメーカーを紹介する「ねじコレ」特集。第4回は「日本鋲螺株式会社」を調査してきました!
産業道路沿い、吉田の「エディオン東大阪店」南側にある本社工場。住宅街に突如現れる大きな社屋は、近くを通ったことがある人ならなんとなく覚えているのではないでしょうか。
「ステンレス六角ボルト」「鋼六角ボルト」「六角穴付きボルト」など、六角ボルトのことならお任せのボルトメーカー「日本鋲螺」。
小さなサイズのボルトの製造は本社工場、大きなサイズは八尾工場で。出来上がった商品を管理する八尾商品センターの3拠点で住み分け、製造から納品管理まで一本化されています。
■我が社の1本!「大リーグ養成ギブス」な六角ボルト
そんな「日本鋲螺」でまず見てほしい1本は、もちろん六角ボルト。それもステンレス製です。
昭和50年代はじめ、自社の強みを作ろうと当時は珍しかった錆びない金属のステンレスにチャレンジして生まれたのが、この製品。
「実はこのボルト、季節商品なんですわ」とねじに似つかわしくない言葉を投げかけてきたのは、社長の西川倫史さん。ステンレスは鉄よりも固く、冬には加工が難しくなる。気温の高い夏場に作り、冬は在庫から出荷しているとのこと。こんなところにも、経験とノウハウが…!
「あとステンレスは粘度があるので、金型の持ちも悪くってね。結構大変なやつなんですよ。」
ちょっと待って。そんなに手のかかる製品をなぜ作り続けているのでしょう。
「大リーグ養成ギブスみたいなものですね(笑)」
って…あの、「巨人の星」で星飛雄馬が全身にスプリングをガチガチに装着した、アレです。
試行錯誤して難しい問題をクリアすれば、技術力が上がる。星飛雄馬はギブスをつけることで強くなりました。それと同じく、他社ができない「ステンレス」に取り組むことで日本鋲螺は「技術力あるねじメーカー」としての地位を確立していったのです。
昭和56年に開発されたステンレス製六角ボルトは、以後「日本鋲螺」の代名詞となっていきます。
恐るべしステンレス製。「ねじ製造養成ギブス」と言えるかもしれません。
■目指すは飛行機のようにスピーディーでかっこいいねじ業界
六角ボルト界の革命児「日本鋲螺」ですが、その出発点は昭和14年、大阪市東成区に設立された「岩本製鋲所」。初代社長の岩本利一さんがリベット(金属の留め具)の製造を始めます。
当時は木ねじ全盛の時代でしたが、戦後鉄ねじ普及の波がやってくると、岩本製鋲所も鉄へとシフトチェンジ。
高井田への移転を経て現在の社名に変更。昭和36年には行政の誘致を受け、吉田へと移転します。
ところで、初代社長は「岩本」さんですが、西川社長の苗字と違います。
「娘ばかりだった二代目の次女と結婚し、会社を継いだんです。」
入社前は、大手重機械メーカーで航空機のジェットエンジン部門の予算管理に携わっていた西川社長。「ジェットエンジンは半年以上かけて構想し形にしていきますが、ねじはとにかくスピーディ。環境が全然違いましたね」
結婚前、先代から会社を継いでほしいと相談を受けた西川社長。
飛行機を作っていることに誇りを持っていましたが、一大決心でねじの世界に飛び込みます。
ねじ業界では衝撃の連続。次から次へと新しい加工技術が出てたり、景気の影響をもろに受けたりと、絶え間ない変化があったからです。
■世界はねじでつながっている
ふと、社長の胸に目をやると「この世はねじでできている」と描かれた缶バッチがキラリと輝いています。「日本ねじ工業協会」で作成したバッチで、社員全員がつけているそう。
「ある時、新幹線のトイレにNBマークのねじが使われていることを発見して。あ、こんなところにも使われているんやな、と。自分でさえ自社製品がどこに使われているかすら分からないから、社員はもっとわからないはず。ブランディングの必要性を感じました。」
ねじは、最終的に何に使われているのかが見えにくいもの。
「スタイリッシュとまではいかなくとも、『僕のお父さん、ねじのメーカーで働いてるねん』と自慢できるよう、できることはしていきたいんです」と西川社長は話します。
前職で得た経営力だけでなく「かっこいいものを作り出すセンス」までを持込んで、ねじ界の地位向上に取り組んでいるのです。
こうした細かな広報に始まり、工場見学の受け入れなど「外から見られること」を意識した企業運営に現在取り組んでいる「日本鋲螺」。目指すのは飛行機のようにスピーディーでかっこいい、ねじ業界。
ねじとかっこよさは共存するのか。日本鋲螺はさらなる「大リーグ養成ギブス」を自ら装着し、難題に取り組んでいます。
■日本鋲螺株式会社
住所:東大阪市吉田4-4-32
TEL:072-962-0761
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