金哲元よ、ありがとう!近鉄ライナーズ勇退独占インタビュー

   

2018-2019シーズンをもって近鉄ライナーズを勇退する、金哲元(キム チョルオン)選手。そのシャイな性格ゆえ、今まで週刊ひがしおおさかでインタビューすることはほとんどありませんでした。
しかし、退団を前に無理を言って初の独占インタビューに成功!
12年間の思い、そしてチームへのレガシー…ライナーズの顔として第一線で活躍したSH(スクラムハーフ)に、聞いてきました。

新しくなった花園で、最後の撮影となった金選手。

ー今日はよろしくお願いします。実は、緊張と興奮でドキドキしてます。

 えっ、どうしてですか。

ー初めてじっくりとインタビューさせてもらうので…。金選手はいつも「ぼくはいいから」と全然出てきてくれなかったじゃないですかっ!

 すみません(笑)。ぼくなんかより、ほかの選手を取り上げてあげてもらった方がチームや後輩にとって良いんじゃないかと思って。若手選手も頑張っているから。

ーそうだろうなと思っていました。なので今回インタビューを受けてもらって、「ついに来た!聞きたいことがありすぎて、大変や」となったわけです。

 なんでも聞いてください。

ー何からお聞きするか迷うところなんですが…金選手のラグビー人生をほとんど知らなかったので、その辺から。プロフィールをなぞっていくと、出身は韓国。朝明高校(三重)、大阪体育大学、そしてライナーズといった経歴です。ラグビーを始めたのは、ご出身の韓国にいた頃からでしょうか?

 そうです。野球やサッカーの経験もありますが、ラグビーが一番楽しかったです。熱い気持ちも出せるし、自分に合っているスポーツでした。

ー熱いパトスがほとばしるプレーは、昔からだったんですね。

強気なプレーに、我々は何度も魅了され彼の名前を叫んだ。

 熱くなりすぎることもありますが(笑)。ぼく、高校行けないほど勉強ができなかったんですが、幸いスポーツはよくできたんです。先生の勧めで、全国優勝を争えるレベルの「養正(ヤンジョン)高校」へ進みました。背は小さいけど、計画的にやっていれば高いレベルまでいけるんじゃないか?と思い始めたのもその頃です。

ー韓国でプレーする中で、手応えがあったと。三重県の朝明には、途中で編入されたんでしょうか?

 養正高校の卒業まであと2ヶ月に迫った頃、これも先生の勧めで朝明に編入し、2年生になりました。大きな決断でした。

ー人生がガラッと変わりましたね。

 養正高校時代に菅平に合宿に行ったことがあって、「やるならこんな環境でやりたい」と感銘を受けました。

ーそれほど日本の環境が良かったんですね。朝明高校からそのまま日本に残り、大阪体育大学へ。公式戦に出場し続けました。

 韓国ではチケットを買って見に来る競技じゃないので、リーグ戦も大学選手権もたくさんの観客がいて感動しました。

「奥さんとは大学時代に会った」とのこぼれ話も。馴れ初めを、なかなか詳しく教えてくれました。

ープレーに専念できる環境、そして「見てくれている人がたくさんいる」ことが、日本でラグビー人生を歩む決断を後押しした、と。ライナーズへ入団を決めたのは、そういった背景のほかに何かきっかけがあったんでしょうか?

 後から聞いた話ですが、大学1年の頃からライナーズ元監督の中谷誠さんが注目してくださっていたみたいです。

ーおおお、中谷元監督!その頃からもうつながりが。

 当時のライナーズスタッフが韓国までぼくの母に会いに行って、入団を説得してくれたこともありました。熱量がすごかったんです、中谷監督は。

ー韓国まで!なんという情熱…。

 母が「良いチームだね」と言ってくれて、入団を決めました。

ーそこまでしてもらったら、惚れますよね。金選手自身は、日本でプレーすることに抵抗はなかったですか?

 はい、まったく。日本でずっとやっていこうと決めていました。

ー2007年にはラグビーワールドカップ(RWC)の日本代表にも選ばれましたが、それはライナーズ入団1年めのことですね。

 はい。ちょうどオーストラリアへラグビー留学をしていた時、急に呼ばれました。パッと行って、パッと帰って来ちゃったんですが(笑)。

ーバックアップメンバーとして招集され、ウェールズ戦にリザーブ出場。矢富勇毅選手の代わりに入り、後半30分くらい出られたと記憶しています。

 いまだに覚えていますし、良い思い出ですね。RWCは、世界中の人たちがわざわざお金を払って観戦するんだと思うと胸が熱くなりました。

ー「見てくれている人がいる」と意識することが、金選手のバイタリティになっている気がします。

「大学のときに韓国代表の話もありましたが、はじめから日本代表になろうと決めていました。」と金選手。RWCへの強い思いをもつ。

 バイタリティ…そうですね。やるからには楽しく、熱を持ってやらないと。熱くなりすぎて「落ち着け!」と言われることもありますが(笑)。

ー(笑)。日本代表で経験を積み、その後はライナーズの主力選手として開花されました。12年分の思い出とがあると思いますが。

 悔しかったことも嬉しかったこともありすぎて。う〜ん…一番感動した試合は、2007-08シーズンのトップチャレンジ1のリーグ戦で、1位が決まった試合です。

ー秩父宮での横河武蔵野アトラスターズとの試合ですね。

 横河に勝ってトップリーグに昇格が決まり、日本選手権にも出場できたんです。

ーで、次のシーズンのトップリーグでまた横河と対戦。

 出ていたメンバーは、今でも覚えています。ラディキ・サモとか…。

ー懐かしい!

 ほかにも瑞穂でサントリーに勝ったことや、東芝とは相性が悪くて毎年なかなか勝てなかったこと…。

2016年のNTTコミュニケーションズとの試合では、トップリーグ100試合出場を達成。

ー次々と出てきますね。数々の試練や喜びを経験し、チームになくてはならない存在となった金選手ですが、常に苦楽を共にしたハーフバックの選手に何か思うところはありますか?同じく勇退する重光選手とは、コンビを組むことが多かったですが。

 シゲさん(重光選手)は、一番信頼していますね。

ー100試合くらいは組んでますよね、多分。

 最初から最後まで一緒だった気がします。プレッシャーを感じる試合でも、シゲさんがいれば「なんとかなる」と思えました。

ー2人のコンビネーションを見ていると、安心しました。2人のベテランハーフバックがいなくなった今、下の世代への期待が高まります。

 藍好(住吉選手)は波に乗れば爆発できる良い選手だからもっと試合に出てほしいし、大体大の後輩のタケル(福居選手)は周りに気を使えるし…野口は言ったことをやり通していて尊敬できます。みんな良い選手なので、がんばってほしいです。

ー後輩たちに何か残しておきたい思いもあるのでは?

 チームメイトには今シーズンの練習中言ったことなんですが、ラグビーを好きな気持ちをもっと出してほしいな、と。

ー熱い気持ちを。

 ぼくたちは自分が決めた人生で、自分が決めたチームでプレーしています。自分がやりたくてしていることだから、限られた時間のなかで楽しくプレーしてほしいですね。

ーなるほど、「ラグビー人生を楽しむこと」。悔いがないようにしてほしいですね。

 人との関係を大切にする「楽しい」チームなんです、ライナーズは。ぼくがずっとライナーズにいたのは、その居心地の良さがあったからです。みんな本当に良い選手なので、次につなげていってほしいです。

ートップリーグ復帰に向け、ここからですね。ありがとうございました!

金選手の、初お姫様抱っこ!ようやく念願が叶った。

後輩たちに思いを託し、ライナーズを去る金選手。次のステージは、これからじっくりと考えていく予定。
あの熱い闘志を、激しいタックルを、そして「金哲元のキムチうどん」を、我々はいつまでも忘れない。ありがとう金哲元!さようなら金哲元!
【関連記事】
キムチョルオン選手が100試合達成 もっとも印象に残っている試合とは?(2016/9/18)

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mihorobot東大阪探検隊・記者

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生粋の八戸ノ里っ子。人気の八戸ノ里東小・小阪中学校校区に住んでいる。
取材へ行けば、同級生のお父さんがやってるお店だった・・・ということが多々あり。
尊敬する人は藤子・F・不二雄先生。

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