【ねじコレ#10】チタンの「カニ」は軽くて、強い!ステンからチタン、そしてダイバシティへ取り組む興津螺旋
ねじメーカーを紹介する、ねじコレ。今回の舞台は東大阪から足を伸ばして、静岡・清水区へ。なんでも、漁港の街で珍しい「カニ」が見られるのだとか。行くっきゃない!
駿河湾に面する街、興津に存在しているその「カニ」。
磯の香り漂う湾岸から北へ向かうと見えてくるのが、興津螺旋(おきつらせん)株式会社。言わずもがな、ねじメーカーです。
「このロゴは先代から受け継いだもので、詳細はわかりませんが『興』の字がカニの裏面と似ているからと言われています」と、現れたのは3代目社長の柿澤宏一さん。
1939年に創業し、現在は総合ねじ部品メーカーとして成長。設計から製造、販売までを手がけています。
ステンレスねじのトップメーカーとして長きに渡りその座に鎮座してきましたが、
「いやぁ。ステンレスっていう強みは捨てたんですよ」。
え、そんなにさらっと言っちゃう?
■我社の1本はコレ!チタン合金ボルト
1939年に創業し、木ねじ、ステンレスねじの道を歩んできた興津螺旋。
高度経済成長の際には需要が拡大し、ステンレスねじのトップメーカーへと上り詰めます。
今でも主力商品のひとつですが、競合メーカーとの価格競争の激しさから、企業として次の一手を打たなければなりませんでした。
そこで着目したのがチタン素材。「チタン合金ボルト」です。
「キャップボルトをつくれないか?とお客さんから連絡入ったことがきっかけです。ちょうどリーマンショック時でやることがなかったし(笑)、まずはステンレスで作ってみて、次はチタンでやってみよう、と。高品質化することが生き残る道でした。」
ステンレスに比べて強度が高く、比強度でも勝るのがチタン合金の特徴です。つまり、同じ強度でも後者の方が軽いわりに強い素材。錆びにくく高品質という面も。
ただ、ステンレスよりも高価で、はじめての経験なのでニーズがあるかわからない。
そんな中、柿澤社長は素材の特性を活かして自転車の部品や・スノーボード板など「軽くて強い」が求められるスポーツ関連分野に目をつけます。
展示会で仕掛け少しずつ評判に。プロが使う用具など、ハイエンドの商品に使用されるようになりました。
ステンレス一筋から脱却し、チタンへ。現在ではプラスチック、ニッケル合金など様々な素材に挑戦しています。
■ないなら作れば良いじゃん!ねじガールも、ダイバーシティも。
「何でも、時代によって変化させていかないと」と話す柿澤社長。その考えがもたらしたものは、商品開発だけではありません。
興津螺旋で働く女性社員「ねじガール」もそのひとつ。
2012年、製造現場に女性がはじめて配属されたことをきっかけに、危険で重たい作業を減らしたり、1時間単位で有給を取得できるようにしたりと環境改善を徹底。数多くのメディアで取り上げられるようになります。
社全体の男女比率は現在5:5。評判を聞き、入社希望する女性も多いのだとか。
「女性という面が取り上げられがちですが、環境改善って誰しもが働きやすくなることなんですよね」。
言い換えれば、ダイバーシティ。
「世の中にないなら、作れば良いんです。チタンを通して色々な道が開けてきました。」とさらっと答える柿澤社長は、まるでチタンそのもの。
チタンの「カニ」は軽くて、強い!カニ澤社長、と何度も呼び間違えそうになる記者ミホロボットでした。
■興津螺旋株式会社
静岡県静岡市清水区興津中町1424
TEL:054-369-0111
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