白穂の「あんどーなつ」ビジネスに迫る!午前中に完売する理由とは?

   

若江岩田駅から岩田本通り商店街を南に10分ほど歩くと見えてくる「菓匠庵 白穂」。

若江岩田の名菓子店「菓匠庵 白穂」。週刊ひがしおおさかの事務所からも徒歩5分で行けます。

創業は1981年。2008年に現在の場所にお店を移転、2代目の新澤貴之さんが商品を手掛けます。
「白穂焼」や夏の名物「葛アイス」などヒット商品を多く生み出しています。

新澤さんの大作と言っても過言ではないのが「あんどーなつ」。

今や白穂の看板商品「あんどーなつ」(税込120円)。

早いときには、午前中に完売してしまうほどの人気商品です。販売開始当時は1日10個しか売れないこともありましたが、今や年間10万個売れる白穂を代表する商品に。

「一体なんでこんなに人気なんだろう?」と、記者・ホッケー梶間には疑問が生まれました。
その秘密を、新澤さんに直撃してきました。

そこには、綿密に練られた「あんどーなつビジネス」が隠されていたのです。

2代目店主の新澤さん。「え〜、そんな大層なことないよ」と言いながらも、2時間ほど熱く語ってくれました。

販売開始は2014年。当時世間で流行中だったかりんとう饅頭を、自店舗でもできないかと商品開発をスタートしました。しかし、試作品は「固くて油っこい」と意外にも不評。
「この辺では、柔らかい方が好まれるのかも」と考えた新澤さんは、ソフトかつレシピが似たあんドーナツに目をつけました。試作の評判も上々で、商品化が決定しました。

かりんとう饅頭が発想の出発点だったことから、生地に黒糖を使うことに。
「ソフトに仕上げたいときは、黒糖や上白糖を使います」と新澤さん。

20種類ほどある国産のサトウキビの中でも、沖縄・波照間島産の黒糖(サトウキビ)を使用しています。

沖縄や奄美大島など、年間を通して温暖な地域で栽培されるサトウキビ。3mくらいの高さがあります。(写真提供:新澤さん)

自ら産地に出向き、黒糖の製造工場にまで足を運ぶほどの、黒糖への情熱。
「沖縄には、元からあった島とサンゴ礁が隆起してできた島があります。それぞれ適したサトウキビを栽培しているんですよ」と新澤さん。

黒糖の製糖工場。(写真提供:新澤さん)

様々な黒糖を食べ比べ、たどり着いたのが波照間島産でした。

波照間島産(左)と西表島産(右)。波照間島産は、比較的クセがなくすっきりした甘み。

生地だけでもこれほど情報が詰まっていますが、あんこも緻密に計算されています。あんこは「甘さのバランスが重要」と新澤さん。
北海道産の小豆とビート糖(てんさい糖)の氷砂糖を使用しています。注目してほしいのはビート糖。
「本当は、防腐効果があって安価な砂糖を使いたいんです。でも、たくさん入れてしまうと甘ったるくなってしまいます。日持ち日数が同じで、よりスッキリした味わいになるのがビート糖なんです」。

外は黒糖でコクのある甘みを出し、中はスッキリしたビート糖。2種類の砂糖を使い分け、甘さのバランスをとっているのです。

口当たりの良さを考え、こしあんに。優しい舌触りは新澤さんの努力の結晶。

生地とあん意外にもまだまだ秘密が。
ドーナツの周りにまぶされた、白い粉。グラニュー糖(砂糖)だと思っていませんか?

1日経っても溶けない理由とは…。

実はトレハロースなんです。グラニュー糖に比べ甘さが40%ほどで、時間が経っても溶けないのが特徴。

めちゃくちゃ細かく教えてくれる新澤さん。講演会でも同業者にレシピを教えることも多いそう。
こんなに簡単に教えてしまって、誰かに真似されるのでは…?と恐る恐る聞いてみると、

「いいんですよ、真似されても。この農家さんと契約してるのは僕だけやし(笑)、そこも真似されたとしても、完全には再現できませんから」と笑みを浮かべます。

材料やルート、作業の仕方など、すべては今まで新澤さんが積み上げてきたもの。たしかに、完全に再現できるはずはありません。

あんドーナツ特集の雑誌を見せてくれました。

こんなにも緻密に計算されたあんどーなつ。午前中に売り切れてしまうのも納得です。
売れることはわかっているのに、どうして午後からも製造しないんでしょう。

現在白穂では、平日は200個、土日は300個。予約やイベントなどが重なると1日に1200個製造していますが、12時〜13時頃には売り切れてしまいます。そこから追加で作ると1時間30分。予め1日の製造工程が決まっていて、その工程を崩してしまうとスタッフさんの負担にもなります。
それに常連さんは、「午前中に売り切れる」と認識している人が多いのも事実。以前追加で作っていたことがあったそうですが、結果的に余ってしまいました。
「こういった事情があるから、追加で製造しません。毎年20個〜30個ずつ1日に作るベースの底上げはしていますけどね」と、スタッフさん思いの社長に見えますが…。

でも、ちょっと待って。本当にそうなの?実はブランディングなんじゃないの?

新澤さんのこの笑顔、本当は何か隠しているんじゃないの…?

僕はひらめきました。「午後から製造しないのは新澤さんの戦略なのでは」と。
あえて製造数を増やさないことによって、あんどーなつに価値が生まれる。「午前中に行かないと売り切れるよ」と口コミで伝わる。うわさを聞いたお客さんが買いに来てくれる。ほかの商品も買ってくれて、商品のレベルの高さがわかる。

甘みのバランスや産地を追求しているのも、すべて新澤さんの戦略だ!と声を大にして言いたい。

ちょっと考えすぎかな?
でも、それほどの価値があるのは確かです。

重要なのでもう一度。
白穂のあんどーなつは、午前中(10時だと確実)に買いに行きましょうね。

■菓匠庵 白穂
ホームページ:菓匠庵 白穂
住所:東大阪市若江本町1-4-21
電話番号:06-6723-2075
営業時間:9:00~18:30
定休日:火曜日(火曜日が祝日の場合は営業)
駐車場:あり(4台)

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ホッケー 梶間

ホッケー 梶間

投稿者プロフィール

山口県出身。
大学生のときに大阪にやってきました。
高校からホッケーを始め、現在もやっています。
なのでホッケー梶間です。
10chとYouTubeを見て生きています。
食べに行ったお店の中で1番カロリーが高そうなものをだいたい注文します。

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コメント

    • ようはっぱ
    • 2020年 3月 22日

    ホッケー梶間さん、詳細なレポありがとうございます。
    すごーい。
    一つのあんドーナツにこれほどの秘密?や戦略?が隠されていたとは。
    職場が変わったし、ラグビーの試合もないので、中々東大阪に行けないのが残念です。
    味を想像しながら、いつか食べれる日を楽しみに妄想しています。

    • ホッケー 梶間
      • ホッケー 梶間
      • 2020年 3月 24日

      なかなか聞くことができないお話で、貴重な取材になりました。

      夏には、溶けないアイス「葛アイス」というのもありますので、東大阪に来た際にはぜひ「白穂」へお立ち寄りください!

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