サンウルブズが、厳しい局面に追い込まれています。
6月2日、CEOの渡瀬裕司氏がオンラインでの記者会見を開き、チームの解散と今後の見通しを語りました。
そこで出てきたのは、想定よりも遥かに大きかったファンの熱狂でした。
南半球のニュージーランド、オーストラリア、南アフリカのチームが半年間におよぶ世界最高峰リーグを戦う「スーパーラグビー」。そこに日本代表に準ずる構成で挑む。それがサンウルブズでした。
しかし、戦績不振や「年間10億円の参加費を捻出できない」などの理由から、2020年シーズンで除外されることが決定。さらに日本国内リーグ「トップリーグ」がサンウルブズのシーズンとかぶり、日本代表経験選手たちは国内チームを優先します。結果、大学生や海外選手、下部リーグであるトップチャレンジリーグ勢でチームを編成していました。
3月、厳しい戦いが続くサンウルブズにコロナ禍がまっさきに襲います。日本では試合ができないと、3月8日に開催予定だった花園ラグビー場での試合がオーストラリアに変更。さらに14日の秩父宮ラグビー場での試合もオーストラリアへ。以後はリーグ全体が止まってしまう非常事態になります。
結局、リーグは7月よりニュージーランドとオーストラリアは国内のチームで試合を続けることを決定。サンウルブズも参戦に向けて交渉を続けていましたが、5月30日正式に参加断念を表明しました。
日本代表の強化のために誕生したサンウルブズは、ワールドカップでの日本の躍進を生み出しました。「ONE TEAM」もサンウルブズなくして達成しなかったでしょう。
さらに副産物として生み出されたのが、渡瀬裕司CEOも語った想定を超える「熱狂したファン」の存在です。
2016年2月27日、週刊ひがしおおさかは東大阪とも関係が薄く、当時は近鉄ライナーズから選手が参加していないサンウルブズの取材のために東京・秩父宮ラグビー場へ取材へと向かいました。そこで真っ先に触れたのは、スタジアム周辺にいる多くのファンでした。
秩父宮ラグビー場での試合には、毎回2万人近くのファンが訪れます。
日本を背負って茨の道を選ぶチームに対し、ワールドカップで戦った英雄たちに対し、新しい日本ラグビーの風に対し。ファンは熱狂していきます。
しかし、サンウルブズは勝てません。善戦すらできず、初勝利はファーストシーズン最終戦。2年目以降も苦戦は続き、5年間のシーズンで9勝58敗1引き分け。
なにもわからず、食事にすら苦労した1年め。
代表経験の少ない選手を起用して、経験しながらチームも成長した2年め。
3勝をあげて、未来への夢を抱けた3年め。
ワールドカップに向けて、大量の選手を入れ替えながらまともに戦えなかった4年め。
そして、大きな不運が襲ってきた5年め。
どのシーズンにも、多くのファンが駆けつけ、声援を送りました。日本代表に送る声援とは違う
「明日のラグビーのために送る叫び」
がスタジアムを覆い、さらに国境を超えて。
そして、サンウルブズと戦うすべてのチームが試合後の記者会見で
「本当にすばらしい歓声だった」
と言うほどの熱気を作り出していきました。
今期の試合が行われないため、サンウルブズはこれで解散になります。
このチームはどうなるのか。日本ラグビー史上もっとも日本人を熱狂させたサンウルブズは、どこに行くのか。
渡瀬CEOは記者会見で、
「今シーズンの締めくくりとして、チームをどう残すのかがファンとのつながりを残す上でも、ファンの皆さんと繋がりがあることをしたい。理想は試合だが、現実的にはファン感謝祭のようなものかもしれない。もしかしたらオンラインになるかもしれない。」
と話します。
ワールドカップで好成績を残すためだけに作り出されたサンウルブズがその役割を終えたにもかかわらず、多くの人が何かを残そうと動いています。
サンウルブズはどこへ向かうのか。
チームとして残すには、どうやって稼ぐかが課題になるでしょう。
今までのように選手を国内のチームから借りることはできそうにありません。
そもそも、戦う場所もありません。日本にも、世界にも。
では期間限定のオールスターチームのようになるんでしょうか。
その形で、私たちが愛したサンウルブズが愛するに足りる存在で有り続けることができるのでしょうか。
もう一度、体験したい。あの熱狂を。
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