負ける。負け続ける。それもただの敗北ではなく激烈な負け方。
90余年のライナーズの歴史の中で、間違いなく今は最も辛い時期だ。こんなに何十点も毎試合とられるなんて、多くの古参ライナーズファンも新しく好きになってくれたパッセンジャー(今季からファンにつけられた愛称)も、いやもうほんと驚いてるよね全く。
試合の詳細はこちら↓
週ひが式ラグビー試合まとめ ブラックラムズ東京vs花園近鉄ライナーズ 2023年2月25日
2月25日、花園近鉄ライナーズはリコーブラックラムズ東京と対戦しました。これまで大敗を喫してきた相手は基本的に優勝を争う強豪。ブラックラムズは戦前12チーム中10位と、比較的戦えるはず。いや、たぶん勝てる。そう、勝てるぞ!
と、試合前のファン心理はこんな感じだった。
オレヘッドコーチの明日の見解 pic.twitter.com/F0RONkVnCl
— モンモン (@uchinomonmon) February 24, 2023
その勢いで前半は10-14と善戦。いや、不利な風下を考慮すれば互角以上。後半風上に立って…。
との期待を裏切るように、後半は早々にトライを奪われ、その後はなんと被トライ8。片やライナーズは敵陣に入ることもままならずノートライ。
10-64と大敗北である。勝てるかもしれない相手に大敗する。これが最も厳しい現実だ。
やればやるほど厳しい現実が突きつけられる。特に今回は
・前半はスタッツで圧倒していた
・シンプルに当たりで負けボールを奪われトライされる
という、個々の能力ではなくラグビーな部分での敗戦。
この1年の準備が根本的に間違っていたと思い知らされる結果だ。
きれい事は通用しない。ふんわりしたお題目も無意味だろう。

リーダーグループの1人ゲニアも空回りしていた。
「気合いが足りない」「練習がおかしい」「戦術でなんとかしろ」という批判は的外れ。個人的ストレスを発散するためにスタンドで声を出すなら、まず自分を見つめ直すべきだ。いくら騒ぎ立てても、シーズンをスタートさせた上富田合宿で描いた夢の修正はできないのだから。

いいプレーを連発するもトライに繋げられなかった岡村。
それでも公式戦は続く。ファンは、パッセンジャーは応援をやめない。そんな愛する人々のために、チームを来季へとつなげるために「適切な未来への投資」が強いられる。
まず、この状況だからこそ愛してくれる人々を裏切らないこと。今、付いてきてくれる人々はこの先何十年も続く宝になる。ともに戦って、すべてのライナーズの柱になってもらう。
我々もメディアといえどファンの端くれ。どうなろうともライナーズと戦う覚悟はできている。

2018年降格時にキャプテンをしていた樫本。
オンフィールドでは、未来のスターを10年戦える人材を育てよう。若手選手を使わざるを得ない状況を利用しよう。20歳そこそこの選手たちに今この現実を経験させて、強いチームとは何かを学ばせるのだ。15年後、その彼が引退する日。全員で涙を流してこのシーズンを笑いあえるミスターライナーズを育てたい。その代償が今後もしばらく続く大敗なら、甘んじて受け入れる覚悟だ。

弱いチームでの試練を乗り越えてほしい、シオサイア・フィフィタ。
そう言う意味で、今もっとも我々が注目しなければならないのは宮下大輝だ。当初はリザーブでの出場で当たりで負けるシーンも見られたが、徐々に強さを覚えてきた。特にトライを奪ったプレーは成長を感じられるものだった。

宮下と三竹。今季急成長の2人に10年後のライナーズを託せるか。
ガーデンバショップがディフェンスラインを突破し、そのオフロードに反応した宮下。ディフェンスされながら、強く当たられながらそのまま下に潜って執念とスキルでグラウンディングする。
精神的な余裕と気迫、そこから生まれる技術が発揮された。経験は時間を生み出す。

奥に見えるガーデンバショップの視線が熱い。
ラグビーも多くの仕事と同じで、過ぎた時間は戻せない。そしてこれもまた同じく、大失敗をしたあとの対応こそがこの先の10年を決める。信頼を得るには成長しかない。自分たちが成長していると、ファンに伝えるしかない。
シーズンはまだ7試合ある。その先に入替戦もあるだろう。
勝てる試合は少ないかもしれない。もしかしたら今以上に辛いことが起こるかもしれない。でも今成長しなければ10年後、思い出したくない過去になってしまう。この時を無駄にするな。人生の貴重な1年をなかったことにするな。
そして、何がなんでも残留を。具体的すぎる目標こそが成長を促す。焦らず、しっかり目の前のことをやり抜こう。

カパはライナーズになくてはならない選手になった。
今回、試合後の会見で厳しい質問をした。いや、結果論の意地悪な質問だ。「前半もっとPGで得点できたのでは?」と。
それに対して、野中キャプテンは今季初めて具体的に反省点を述べてくれた。
「迷いがあった。それがチームに伝わって取りきれなかったと思う」
と。今までは「それぞれの選手がやれることを実行できていない」と言った抽象的な答えが多かった。
今季初めて会見で対話が成立した。だから私は、キャプテンを信用する。

日本出身選手ではずば抜けたパフォーマンスを見せる野中キャプテン。
前半、ライナーズはチーム全体で得点を取る意識に欠けていた。チャンスはたくさんあった。判断ミスも、イージーミスも多かった。あと3トライは取れていた。
ミスは環境で起こる。個人の資質とはほぼ無関係だと、ラグビーに携わる人でなくとも多くの人が知っている事実だ。

常に余裕を持ってプレーできている菅原。それでいて熱い。
今シーズン、特に12月24日スティーラーズ戦での敗北以降は、選手もファンもチームを信用できていないのではないか。
我々メディアも含め、関わる人誰もが漠然とした何かのせいにして、言い訳をしながら戦っている。
環境を変えるのも、自分から。自分が変わらなければ、周りは変わらない。そう考えるのが、社会では当たり前の大人の姿だ。
そしてライナーズは2018年1月の降格を機に、大人のチームになったはずだ。時間をかけて主体性を身につけたはずだ。
だからこそ。もう一度チームを信じて。成長し、シーズンを笑顔で終わろう。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。