「1番印象に残ってるのは、トップリーグに昇格して初めての試合。長居での、横河武蔵野との対戦です。」
ライナーズが、トップリーグで初めて仙台へ遠征した試合で、不動の9番金哲元(キムチョルオン)選手がトップリーグ100試合を達成しました。
本日の週ひがMVPは、もちろんこの人、9金哲元選手です。
普段は、インタビューも恥ずかしいとあまり多くを話さないキム選手。試合後、開口一番にあの試合をあげたことは、実は少し意外だったのです。
今日の試合は、ひとことで言えばライナーズの完敗です。
グラウンドを横いっぱいに使って、ワイドに攻めてくるNTTコミュニケーションズに、好きなように走られてしまいました。
今シーズン、ここまでしっかり機能していたものがうまくいきません。

4ストーバークのラストパスは外へ。こういうシーンが多かった。
対するNTTコミュニケーションズは、PGでトライでと、前後半ともに着実に加点され3-18。
昨シーズン2度の接戦で、両チームのファンを熱くさせた両チームの対戦とは思えない、見るのが辛くなる戦い。ノートライでの敗北でした。

ディフェンスを敗れないためか、たびたびゴロパントを使った。
ライナーズがトップリーグに復帰を決めたのが、3回前のワールドカップ2007フランス大会が開催されたシーズンです。カナダに引き分けて、歴史的な勝点獲得を果たしたあの大会に、当時ルーキーだったキム選手は日本代表として出場していたのです。
韓国出身、三重県朝明高校から大阪体育大学を経て2007年より近鉄ライナーズ。当時ウェストに降格していたチームに、こんなすごい若者が来るなんて。フランスでの勇姿を観て、衝撃を覚えるとともに、無性にうれしくなったことを覚えています。

キム選手のこの横へのスピードに、記者は魅せられています。
残念ながら今日の試合で、キム選手が大活躍とはいきませんでした。
力では圧倒していたスクラムでは、押し込んでいるのにペナルティーを犯してしまいます。

優位に立ったかに見えたが、ペナルティが。
いいアタックをしても、トライ目前でミスをし、取りきれず。
噛み合わない。ライナーズのやることはうまくいかず、逆にNTTコミュニケーションズは全てが思い通りに運べている。ライナーズファンからはそう感じる流れでした。
「100試合とは関係なく、もう2敗してますからね。今日は勝ちたかったですよ」
今シーズンで10年目の32才。すっかりチームの柱になった男は試合を振り返って、悔しそうに語ります。

大阪体育大学でも同期の、松岡勇選手から花束。
2007年、キム選手はワールドカップから帰ってきてすぐに近鉄での試合に出ました。キム選手の活躍もあって、チームはトップリーグ復帰を決めます。昇格を決めた秩父宮ラグビー場。まだあどけない顔でとてもうれしそうに、先輩たちと喜んでいました。
冒頭、キム選手が話す試合は、次のシーズンの第1節。2008年9月6日、ヤンマースタジアム長居での横河武蔵野アトラクターズ戦です。チームにとってはトップリーグ復帰戦、キム選手にとってはトップリーグデビュー戦でした。この日以来、メンバー表に名前のない試合を思い出せるくらい、ずっと試合に出ています。
気迫は若いあの頃のまま。スピードも技術も年々向上し、プレーに冷静さが加わってきました。次々に入団する若手も、追い越すのが大変でしょう。それでも今日、ライナーズは負けました。いくら攻めてもトライを取ることができず、得点は試合開始早々のPGのみでした。

試合後、珍しくおどけてくれました。
「今日は負けましたが、いいプレーもいくつかありました。」
と坪井監督が試合を振り返って話します。抜かれた後に驚異的な戻りでディフェンスしたシーンや、試合終了間際の猛ラッシュなど、次につながるものはあります。
次の試合は2週間後、10月1日(土)に秩父宮ラグビー場にてクボタ戦です。何事もなければ、8年前のあの試合のようにキム選手はSHで試合に出場してくれるでしょう。8年間の経験を上積みして、ライナーズもしっかり修正して、強豪と戦った証をきっと見せてくれるはず。
今年のスローガンは、MOVE FIRST。トップ4を倒し、日本一に向けて、行けライナーズ!

両チームの選手と、記念撮影。「丈夫に産んでくれた母に感謝します」とこのあと。
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