昔、と言っても私が大学生の頃ですから1990年代の前半。ほんの20年ほど前の話です。
バイト先の先輩に「おいしいものを食べに行こう」と、連れられたのが、近畿大学西門前。当時から木造の味のある店構えだった洋食店「キッチンカロリー」でした。
東大阪で学生時代を過ごした人にとっては定番中の定番です。今でもたまに、「近畿大学に用事があれば帰りに立ち寄ってしまう」なんて人も多いでしょう。

この看板に、ピンときたら!キッチンカロリー。
そんなキッチンカロリーが、もうすぐ50年を迎えます。
多くのメディアで取り上げられた同店の看板メニューは、ご存知「ガチャ鉄板焼き(630円)」です。
あまりのボリュームに「食べても減らないメニュー」と一部で評判なのです。
「ひとことで言えば、付け合せの野菜を増やしてカレー味で炒めてる。と言うことです。」
と話してくれたのは、77歳になる椎林要治さん。キッチンカロリーを始められた張本人。看板も店内も、全てお父さんと手作りで始め、50年間守り続けて来ました。

過去に取り上げられた雑誌を見ながら、話をしてくれる椎林さん。
「昔、近畿大学は今ほど有名な学校じゃなかったようで、大阪ではなく地方の学生さんがたくさん来ていたんですよ。」
しかし、都会に出てきた学生には野菜は不人気。自分の田舎でも食べていた目新しさのないものは、好まれません。よって、ガチャ鉄板焼きもあまり人気がありませんでした。

みよ!これがガチャ鉄板焼き!世界中キッチンカロリーでしか味わえない。
「徐々に、ですね。1年、2年と経って少しずつ人気が出てきました。」
キャベツ、タマネギ、ニンジン、ピーマン。たくさんの野菜が豚肉とともに十分な火力で炒められます。
カレー味でギュと引き締められて、生卵を落として登場。このスタイルはずっと変わりません。
具材の野菜の味を存分に引き出し、大盛りのライスがとても似合う珠玉の逸品です。

ハンバーグも人気メニュー。チーズが乗って、すごいボリューム。
さて、加工された食品があふれる現在では、野菜をここまでたくさん使ったメニューは贅沢品になりました。日本の食の歴史を語る際に絶対に食べるべき、後世に残したい東大阪文化遺産と言っていいでしょう。
昔は近畿大学の学生さんや職員さんで8,9割を締めていたという客層も、今は学内に飲食店が増えたせいもあり変化しているといいます。
「長い間、はやりを追いかけずに標準のことをやってきたからでしょうかね。懐かしいと、昔馴染みのお客さんが来てくれることが増えました。これは他のお店にないうちの武器やと思っています」
とニコッと笑う椎林さん。昔話、今のお店の話、聞き続けると止まらない、まさに生き証人。

全部スタンダード、すべてが洋食。
そうやって話し込んでいると、奥様の晴子さんが「お父さん、記者さんも次があるやろうしいい加減にしときや」と合いの手を。
たぶんこれも、50年の歴史の賜物なのでしょう。
さて、キッチンカロリーが50歳を迎えるのは、2017年9月1日。
「いい時代に仕事させてもらえて、妻、娘ほかバイトの子らと一生続けられるのは幸せです」
と話す、椎林さん。
いえいえ、まだまだがんばってもらいます。
みんなに経験とキッチンカロリーの味を伝承してください。

なんとか説得して、奥様と2ショット。ちょっと誇らしげでしょ。
キッチンカロリー
住所:東大阪市小若江3丁目7-5
電話番号:06-6723-0036
営業時間:11:00~15:00、17:00~21:00
定休日:日曜日
駐車場:なし
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