ラグビーの話04 プール分け抽選会が示した日本ラグビーの義務と新たなる夢
- 2017/5/13
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5月10日(水)、京都迎賓館にてラグビーワールドカップ2019のプール分け抽選会がありました。週ひがは直前の「第一蹴の地視察イベント」のお手伝い。ほんの少しだけワールドカップに関われました。
肝心の組合せは、以下の通り。
優勝経験国が入らなかったので、恵まれたと言っていいでしょう。
残る同組は「ヨーロッパ1位」と「ヨーロッパ・オセアニアプレーオフ勝利チーム」。前者はルーマニア、後者はサモアもしくはトンガが有力です。
翌日、多くの新聞が抽選会を伝えました。ふだんはラグビーに冷たく見えるデイリースポーツや大阪スポーツ(東京スポーツ)でも大きく紙面が割かれており、テレビでも映像が。いよいよワールドカップへの助走がはじまりました。
この組合せを受けて、試合の日程は9月に決まります。
さて、書きなれないラグビーの話題に、各メディアにぎこちなさが目立ちます。特にスポーツ紙は、特有のドラマチックかつ楽天的テンポで書き連ね、少し誤解されやすい表現も。SNSでも理解不足の表現がチラホラと見かけられます。

大スポさんがラグビーを取り上げるなんて!
まず最初に、日本の入ったプールA。先に述べたように、ワールドカップ優勝経験国が入っていません。ニュージーランドと南アフリカといった複数優勝経験国が入ったプールBとは対照的です。
日本よりも格上の中で最も勝つチャンスがあると見られていたスコットランドと同組なのは、ラッキーです。同時に優勝経験のないアイルランドが、ランキング最上位国として入ったのは、これまた幸運でしょう。
#週ひがの質問
1番勝てそうなのは?— 週刊ひがしおおさか(公式) (@w_higa) 2017年5月10日
▲週ひがTwitterで行ったアンケート。アイルランドが最も勝てそうだと思われている。▲
しかし、上位2チームのみがトーナメントに進むシステムなため、アイルランド、スコットランドのうち1国に勝利し、ルーマニア、トンガorサモアの2国に圧勝する必要があります。ラッキーな組ですが、楽ではありません。
「楽ではない」は精神論ではありません。なにせ日本は2011年までワールドカップでは引き分け2つをはさんで16連敗。テストマッチ(国際試合)でもアイルランドには勝ったことがなく、スコットランドに勝ったのは大昔に1度だけ。例えどちらかに勝てたとしても、残るルーマニア、トンガorサモアもワールドカップでの実績は、日本より上。もちろん全敗もある。少なくとも4年前の抽選会では、多くのファンが4戦全敗を覚悟していました。
いくら強くなったとは言え、一部メディアの伝えた「トーナメント進出は十分有り得る」とはかけ離れています。

昨年のスコットランド戦はレイドローひとりにやられた。
ここまで、日本がいかに厳しい立場かを力説してきましたが、次は明るい話を。まずこの抽選会に日本が参加できていることです。
ラグビーワールドカップは、上位12国に次回大会への出場権が与えられます。2015年に大躍進(プール戦3位)したからこそ、この日に「アジア1」ではなく「日本」を刻むことができるのです。
2016年以後のテストマッチでの成績も悪くありません。
対カナダ26−22
対スコットランド13−26、16−21
対アルゼンチン20-54
対ジョージア28−22
対ウェールズ30−33
対フィジー25-38
良ければ第一級国(ティア1と言います)に勝利寸前、調子が悪ければ同格に負ける。これが現時点の日本ラグビーの立ち位置と言っていいでしょう。

唯一ケチョンケチョンにやられたアルゼンチン戦。
長い間、弱すぎる日本はティア1の国と試合をすることすら認めてもらえませんでした。今、日本のラグビーファンはテストマッチが決まるたびに「あんな国と戦うことができるのか」と胸踊り、そしてあと一歩で勝てず、悔しがる自分たちがうれしい。2年前に、こんな姿を誰も想像していませんでした。強くならないと、試合する機会すら与えられない。実力差が出やすいラグビーにおいて、強くなるのはとても重要な事なのです。
6月、世界のラグビー界は国際試合実施期間(ウィンドウマンスと言います)に入ります。日本は2019年同組が確定したアイルランドと2試合、同組濃厚のルーマニアと1試合を戦います。2019年につながる試合で多くの日本国民が見守るなか、どんな試合をするか。ワールドカップだけでなく日本ラグビーの未来に関わって来るはずです。
長くなりましたが、最後に日本が強くなって起こった変化をもう一つ。2015年の躍進で日本が出場権を得て、今まで「日本」と同義だった「アジア枠」がどうなるのか注目されていました。結論は”ほぼ廃止”の0.125。日本をのぞくアジア諸国で1位となった国がオセアニアカップ優勝国と試合をして勝ったら敗者復活リーグ戦に出場する。といった、相当ややこしいアレな扱い。ワールドカップ最弱国だった日本に全く勝てない他国の実力を考えれば、致し方ないのですが。

4月の日韓戦。立派な仁川南洞アジアードラグビー場だが、観客席はまばら。韓国でラグビーは超マイナースポーツだ。
ワールドカップの枠が増え続けるサッカーや、WBCの代表規定を各国に任せ参加国の確保を図る野球などと比べると
「ラグビーやる気あるのか」
と受け止められかねないアジア枠の消滅。しかしもし、韓国がワールドカップに出場してしまい、優勝経験のあるラグビー大国と対戦し、100点を超える大差で負けてその映像が国内で流れ、弱すぎるイメージがつくのは韓国ラグビーに深刻な影響が出るでしょう。

軍に所属する選手も少なくない韓国。純血主義をとっていたが、近年ようやく外国生まれの選手も代表に招集されだした。
かつてワールドカップでラグビー王国・ニュージーランドと対戦し、145−17という大差で敗戦。衝撃的な結果により国内での人気を急激に失った国を我々は知っています。その国は、大会の仕組みを変え、シーズンもずらし、代表の強化に尋常ではない労力を使い、人気競技だった過去の栄光とたくさんのしがらみと戦いながら、イノベーションを起こし続けて、次の1勝を勝ち取るのに20年の月日を費やしました。
ラグビーの強化は、一筋縄ではない。それは我々が痛感しています。「衝撃的な結果があったからこそ強くなった」と簡単に言う人もいますが、もっとソフトな離陸の仕方もあったでしょう。日本ラグビーが味わったのと同じ苦しみを隣国に追わせる必然もありません。アジア枠の消滅は、世界のラグビー界のアジア戦略の一つなのです。

チームとしては力が劣るが、個々の能力は高い選手も多い韓国。
日本が急激に強くなっている今、日本が先導しアジアラグビーの強化を果たすことができれば。来たるべく日に、日本、韓国、香港、中国を含めた東・東南アジアの国々で対抗戦を行い、名勝負を繰り広げてそれが興行として大成功を収める。
アジア枠の消滅は、強くなりつつある日本ラグビーに対し新たに義務が課せられ、大きな夢が与えられたことを意味するのです。
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コメント
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熱いラグネタをありがとうございます。
私は抽選会に年休を取って家に帰ってテレビにかじりついてみてました。
いやー、楽しみ。
で、今後、どのような日程で進んで行くのでしょうか?
9月に試合日程が決まるのですね?
どの試合がどこの会場であるのか、チケットはいつ発売か、キャンプ地はいつ発表か、いつからキャンプするのか、、、が知りたいです。
仕事の調整や予算を立てて行きたいです。
キャンプ地で生ダミアンマッケンジーを見たいです。
釜石市がどこのチームが当たるか知りたいです。
そして、花園は???
ネットで探してみても2019年9月からの日程はわかるのですが、それ以前の日程はようわかりません。
残念ながら、ほとんどのラグビー関係者が日程を知りません。
私も同様です。
情報が入り次第お知らせしますね。
ありがとうございます。
よろしくお願いします。(^^)/