巣ごもり期間が長期戦に突入し、SNSでは「バトン」と呼ばれるものが大人気です。つながっている誰かからお題と指名を受けて、自分でやってみてまた誰かを指名する。
歌を歌ったり、腕立て伏せしたり。無数に目の前を流れる「同じことをする人たち」。そのうちそのバトンが「同調圧力」と言う人も現れて、うーん。なんかみんな疲れてるなと思ったりもします。
そしてついに友だちが少ない編集長・前田にも回ってきました。その名も「ブックカバーチャレンジ」。
自分がすきな本を7日間1冊ずつ紹介する本好きのための企画です。
実は前田、本は大好き。裕福ではない家庭に育ちましたが、父と母が本だけは買うことを許してくれました。と言ってもその頃は漫画ばかりでしたが。
誰に回すということを考えなければ、東大阪に関係なく自分の好きなものについて書いていくなら気が楽。ということで、週刊ひがしおおさか内で好きな本を紹介して行きたいと思います。
名付けて「週ひがの好きな本をただ紹介する」。本来は「書籍の内容に触れない」ということのようですが、それじゃ記事にならないのでここではある程度紹介します。だからチャレンジではない。社内でダラダラ紹介しあうノリで始めてみましょう。
第1回はもちろん編集長前田。紹介するのは、鹿野司著「オールザットウルトラ科学」です。
発行年は1990年。サイエンスライターの鹿野司氏が、パソコン雑誌「ログイン」で連載していた科学エッセイ?になるのでしょうか。
1980年代後半から90年代前半にかけて長期間掲載された連載から、ほんの一部を抜粋してあります。
そのためファンからは「全部書籍にしてほしい」「サイトで公開してほしい」と、おかわりを要求されるほど。この熱狂的な愛情を生み出す源はテーマと著者の豊富な知識、そして論理的な文章。多岐にわたる科学的知見で読み手(ほとんどが若いオタク学生)の身近にある葛藤を、論理的に説明して
「自然科学の身近さ」
を伝えてくれるのです。
掲載誌のログインは月刊。そこにだいたい2〜4ページで時事を含んだテーマで連載されます。印象深いのは
・マスメディアにはオタクが理解できないの?
・テレパシーマシンを作っちゃおう
・ソフトウェアは貨幣経済を超えたか
・セイケツなお話
など。今のオタク学生にも興味が持てるかは知らないけれど、私の思春期には無茶苦茶身近でした。そんな青春時代に違和感を感じるアレコレ(だいたいどうだっていいこと)を科学的に
「それにはこういう論理的背景があって…」
とやる。
モラトリアムが感じる自分と社会とのズレ。うまくいかないこと、しんどく感じること、当たり前に思えないこと。それを数学や哲学や、はたまた心理学やコンピュータサイエンスの考え方を使って、優しい語り口で説明していく。
読み手は、あたかもソクラテスの知恵を得たように目の前が晴れ、その光が真実を指し示してくれているように感じる。
そしてパソコン好きの少年は立派なオタクになっていく。
私はこの連載と、同時期のMSXマガジン(こちらもパソコン雑誌)に鹿野司氏が連載していた「人工知能うんちく話」の影響で、数学の成績が最低レベルだったにもかかわらず大学は工学部に進学。なんちゃって理系の道を歩んで、30年経過した今地域情報サイトを運営しています。
理解できないことに出会ったら、それをシンプルに見て分岐をなるべく少なくし、芯になる論理的な部分のみを抽出する。解決するも、逃げるも乗るもその芯次第。
協調性がなく自分勝手で頭の悪い自分が「面白い」を見つける礎を築くことができた、自分にとって忘れることができない一冊です。
残念ながらもう市場には出回っていません。Amazonでも中古(マーケットプレイス)でしか手に入りません。Kindleで再販されないかと思いつつ、自分も誰かの思考の芯になる文章を書いてみたいと思いました。
自分の青春時代を振り返り頭の中が恥ずかしさいっぱいになりながら、1回めのブックカバーチャレンジを終わりたいと思います。
次回、紹介するのはミホロボット。さて、どんな本を紹介してくれるのか。
楽しみ楽しみ。
【ほかの本紹介はこちらから】
01 オールザットウルトラ科学 鹿野司
02 愛するということ エーリッヒ・フロム
03 山川出版社 世界史B用語集
04 誰も戦争を教えてくれなかった 古市憲寿
05 マンガは今どうなっておるのか? 夏目房之介
06 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっぴりブルー ブレディみかこ
07 中国五千年 陳舜臣
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