ラグビーの話06 日本代表への階段を登り始めたフィジー生まれの若者

   

先日、近鉄ライナーズの所属するセミシ・マシレワ選手がサンウルブズでスーパーラグビーに出場し、デビュー戦でいきなりトライを奪いました。
試合の模様は、レポート記事としてアップしたのでそちらを見ていただくとして、今回はマシレワのトライが持つ意味を試合・取材当日を振り返りながら考えてみたいと思います。

マシレワ選手がサンウルブズのトレーニングスコッド(練習生)に招集された際に少し記事にしましたが、近鉄ライナーズには日本代表もサンウルブズ(日本代表に準ずるとされるチーム)にもセブンズ(7人制。オリンピック種目)日本代表にも選手を派遣しておらず、それはトップリーグ16チーム中で唯一。2017-2018シーズンで最下位となり降格したものの、一緒に落ちたNTTドコモにも自動昇格を果たしたHondaにも代表選手がいることから、「近鉄には一人も代表がいない」と自虐的に寂しがっているのが近鉄ファンの間での定番のトークなのです。

降格が決定し、監督も去り、若手有望選手も退団して、プライドをずたずたに切り裂かれていたときにやってきた朗報。それがマシレワのサンウルブズ入り。いきなり出場し、トライまで奪ってみせたのでライナーズファンたちはここぞとばかりに喜びを爆発させたのです。

トレーニングスコッドに招集されたのが3月2日。最短で出場できるのが、3月24日(土)のチーフス戦ですが週刊ひがしおおさか的には元々取材は予定しておらず、別のイベントを内々に企画していました。
「もしかすると出場があるかも」と周囲に迷惑をかけて予定を変更。

一旦、3月22日(木)のメンバー発表には入っておらず。「今週は無しか」と諦めていた金曜日にリッチーフリーマン氏のツイートが。

「松島に変わってマシレワが入る。」と。

これで弊社は大騒ぎ。「ここで行かずにいつ行くの!と」弾丸取材が決定しました。

2ヶ月ぶりに会うマシレワは、髭を剃ってちょっと若返っていた印象。練習のパフォーマンスも良かったみたいで、最短で出られてすごいなあと感心しています。

グラウンドに入った私は、14番(マシレワのこの日のポジション。右ウイングと呼ばれる)が撮れるように、グラウンドの右中間に場所取り。

試合展開は序盤からチーフスがトライラッシュでサンウルブズは苦しい流れに。そんな中、35分にマシレワが本領を発揮します。滑らかでしなやかなコースどりからダミアンマッケンジーを抜いてトライ。しかもほぼ私の目の前ですよ。興奮しないわけないじゃないですか(笑)

というか、涙ぐんじゃった。

そのほかのプレーも80分とおして、自分の役割は果たし、いいプレーができていたと思います。もうちょっとサンウルブズに有利な展開なら、もっとボールが回ってきてより、お客さんを驚かすことができたのでしょうけれど。

試合後、しばらく選手同士で話し合っているところをそばで撮影していると、マシレワ1人に。思い切って声をかけるとうれしそうに「来たの?」て感じの笑顔で歩み寄って来てくれました。
でライナーズポーズ(指をLにするポーズ)を要求。「オイオイwww」と照れながら答えてくれました。「あとでね」と握手をして、その場は別れます。

ファンサービスが終わったあと、ミックスゾーンへ。選手が通るエリアで、記者は話が聞きたい選手を呼び止めてインタビューしますが、ここで問題が。俺、英語しゃべれねえ。

ミホロボットに「とりあえずいつものアレで聞け!」とボディランゲージを強要。しばらく待つとマシレワが登場です。
聞きたいことは伝わるのか?気合と人間関係で乗り切れるのか!?と思っていたら

いつもうちの撮影を手伝ってくれるフォトグラファーのまーこ。さんが登場。「Twitterで英語できないってつぶやいてたから手伝いにきたよ」となんとも仕事ができる気遣いで助太刀してくれたのです。その後はスムーズに、マシレワが質問に混乱することもなく、インタビューは終了。

コンディションの話から始まって、ダミアン・マッケンジーを抜いたときの気持ちなど。いろいろ聞きました。その中で最も印象に残ってるのは「ライナーズのみんなも応援してると思いますが?」との質問に「そうだね。でも今はサンウルブズのことを考えてる。次の試合も出られるようにがんばらなきゃ。チャンスなんだ。」と返してくれたことです。

そう。彼のキャリアにとって大切な時間が今流れているのです。彼はライナーズの一員である前に、一人のラグビー選手なのです。それもかなり将来が有望な。

こうやって、1人の若者がキャリアを積む様を取材できているのは、記者としてこの上ない幸せ。取材し記事にして、それを読んでくれる人がいる幸せ。

ライナーズから初のサンウルブズということで、かなり舞い上がっていましたが、これからはそうじゃない。フィジー生まれの青年が、日本代表へ向け、同世代の選手よりも少し長い階段を一つ上がったのです。近鉄を背負ったマシレワではなく、最も好きな選手として追いかけたい。

思えば、トンプソンも階段を上がっていきました。キムチョルオン、タウファ統悦。あともう一歩でチャンスを逃した太田春樹。
さあ、マシレワの次に続くのは誰だろう。豊田大樹が踏み出したら本当にうれしいだろうな。田淵か?野口か?井波、ストーバーク、みんなチャンスがあるんだ。

そんな若い彼らにライナーズを背負わせるのでは無く、彼らの背中をライナーズが押せるようになりたい。いや、みんなでしていかなきゃ。若者が一歩階段を上がる幸せをまた味わえるように。
そういう意味でも、ライナーズを日本一いいチームにしなきゃ。

最後に。
取材当日、大阪から高速を飛ばして到着した私たちに、知り合いの記者さんやカメラマンさんが「おー、来たね」と歓迎してくれました。そして前半が終わったときにはみんなが
「週ひがさん、来た甲斐があったね」
と、祝福してくれました。
週刊ひがしおおさかのキャラクターが浸透しているようで、うれしいですが恥ずかしかったです。
いい仕事させてもらってます。感謝。


<週ひががお届けするラグビーの話 バックナンバー>

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引退後と仕事
2017/7/05
プール分け抽選会が示した
日本ラグビーの義務と新たなる夢
2017/5/13
大阪教育大学
ラグビー部の挑戦
2017/3/21
セブンズの立ち位置と
関西セブンズ
2017/3/9
ラグビー日本代表と
サンウルブズについて
2017/3/1
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編集長 前田

編集長 前田東大阪探検隊隊長・編集長

投稿者プロフィール

特定非営利活動法人週刊ひがしおおさか代表編集長兼東大阪探検隊隊長。
ふとした思いつきからはじめたWEBサイトが、13年。
これからは地域に嵐を呼びます。覚悟しろ!

好きなモノ:花園近鉄ライナーズ、阪神タイガース、競馬、ゲーム、プラモデル、楽でお金になる仕事。
嫌いなモノ:愛、本物

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